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【注目トピックス 日本株】井関農 Research Memo(8):初年度となる2024年12月期のプロジェクトZは着実に進捗

*13:08JST 井関農 Research Memo(8):初年度となる2024年12月期のプロジェクトZは着実に進捗
■井関農機<6310>の中期経営計画

3. プロジェクトZの進捗と成果
2024年12月期におけるプロジェクトZは、2024年2月に発表された時点で国内生産拠点の集約や広域販売会社の統合などの詳細がなく、2024年7月に追加的に詳細が公表されたが、それを含めて着実に進捗したと言える状況である。

短期集中で実行している抜本的構造改革は、「生産最適化」「開発最適化」「国内営業深化」ともにおおむね計画どおりに進行した。「生産最適化」では、製造所の強靭な体質づくりのため製品組み立て拠点の松山製造所への集約を順次進め、建屋の新設に着手、熊本製造所からのコンバイン生産移管も計画どおりに進んでいる。また、一部実施内容の見直しにより設備投資を当初の460億円から380億円まで圧縮することができそうだ。「開発最適化」では、短期集中で製品利益率の改善を実行中で、個々の取り組みに時間を要したため一部遅延してはいるものの、人的リソースを追加投入するなど回復を図っている。一方、開発の効率化は機種の削減と型式の集約が想定どおり進行し、順次実行フェーズに移行中だ。「国内営業深化」では、2025年1月に営業組織をISEKI Japanに統合したことで、経営資源の集中や迅速な意思決定によって営業施策を強力に推進する体制を構築、成長戦略の基盤とできそうだ。人員構成の最適化では、2024年に希望退職を募集、応募は想定より少なかったが、グループ全体の人員計画を見直すことで人件費水準を予定どおり確保する方針だ。経費削減では、組織や業務の統合に合わせて経費の削減を推進したが、一部遅延したものについては業務の見直しや具体策の実行で挽回する考えだ。

成長戦略も、海外では欧州を軸に売上高を拡大しながら収益力を高め、国内では成長セグメントの販売強化で売上高を維持しつつ収益力を向上する、という方向へと着実に進捗した。海外の地域別戦略では、英国の販売代理店PTC社を子会社化したことで、フランス、ドイツ、英国と3社体制を構築、欧州事業の成長戦略の基盤を確立した。商品戦略では、Non-Agri商品の拡充や環境対応型商品の投入といった面で進捗が図られた。中東欧やトルコ、中近東、北アフリカへの販売エリア拡大、取り扱い商材の拡充、欧州地域内での在庫の一元管理による効率化なども、着手する準備が整いつつあると言えよう。国内の成長セグメントにおける販売強化は、顧客拡大と提案力強化に向けて、ISEKI Japanの設立と大規模企画室の設置、北海道でブランド力のある大型輸入作業機の本州以南への展開、ロボット農機や「アイガモロボ」による省力化・環境負荷低減の農業ソリューションの提供といった形で進捗した。

資産の効率化では、棚卸資産の圧縮へ向け製造拠点と販売拠点それぞれの統合や機種型式の集約を実行する一方、2024年末にSCM(サプライチェーンマネジメント)推進室を設置して調達から販売まで部門横断的に関与することで構造改革を促進する。加えて、投資効果の高い資産へのシフトや余剰資産の売却によって固定資産を圧縮することで、株主還元を強化しつつ純資産を積み上げる方向性が見えてきたと言える。成長に向けたキャッシュアロケーションについても、2028年以降のキャッシュ・フローの増加局面に向け、足元で黒字化するなど営業キャッシュ・フローの改善が続いている。

構造改革や成長戦略などを通じてPBR向上へ

4. 資本コストや株価を意識した経営
同社の株価は低位にある。PBRが1倍以下ということは買収リスクが増すだけでなく、株主に対しても不十分な対応と言え、また東京証券取引所からの改善要請もある。このため同社は、資本コストや株価を意識した経営に注力し、構造改革や成長戦略などを通じてPBRを向上させる方針である。PBR1倍以上を目指すために、同社は営業利益率5%以上、ROE8%以上、DOE2%以上を目標として設定した。目標達成のため、収益性改善、資産効率化、成長に向けたキャッシュアロケーション、IR活動・ESG取り組みの強化を進めるが、このうち収益性改善はプロジェクトZでも目指す改革の本丸で、2027年に2023年12月期比で売上総利益率を1.5〜2.0ポイント向上させ、販管費率を2.5〜3.0ポイント改善する計画である。資産効率化は、遊休資産の売却と投資基準の厳格化により固定資産の回転率を高め、SCM推進室などの在庫圧縮への取り組み強化により棚卸資産の回転率を引き上げる。成長に向けたキャッシュアロケーションは、在庫圧縮などにより営業キャッシュ・フローの黒字化〜拡大によって良化を目指す。IR活動やESGに対する取り組みでは、株式市場で注目される企業となるため、業績の改善はもちろんだが、投資家との接点拡大、情報開示の拡充、経営のスリム化、意思決定の迅速化、ガバナンス体制の強化などを推進する方針だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

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