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【注目トピックス 日本株】ジーデップ・アドバンス:上方修正を発表、AI関連としてPER10倍台は評価不足か

*14:06JST ジーデップ・アドバンス:上方修正を発表、AI関連としてPER10倍台は評価不足か
米半導体最大手エヌビディア(NVIDIA)の国内最上位パートナーであるジーデップ・アドバンス<5885>は4月14日の取引終了後、大幅増収増益となる2025年5月期第3四半期(3Q)決算、通期業績予想の上方修正及び配当予想の修正を発表した。AIマーケット拡大の恩恵をストレートに受けるのは同社のような存在であり、もっともAI関連らしい評価を得る可能性がある一方、現状の予想PERは17倍となっている。

3Q累計数値は、売上高が前年同期比66.9%増の5,439百万円、営業利益が同54.5%増の699百万円となった。生成AIを中心とした大規模AI開発向けの設備投資需要が根強く、案件規模の大型化や為替の影響による粗利率の低下(前年同期比2.9ptの低下)、中途採用に伴う人件費増などによる販管費の増加はあるが、増収効果により営業利益の大幅増益を達成している。3Q以降に人的投資や設備投資に伴う費用が発生する予定であるが、当初想定していた大型案件に加えて、オーガニックな事業成長も順調であり、通期予想は売上高で前期比49.5%増の6,610百万円(事前予想は5,770百万円)、営業利益は同21.0%増の802百万円(同675百万円)に上方修正された。配当予想も1株当たり17.5円から23.0円に上方修正され、グロース企業ながら配当利回りも1.36%となっている。

なお、ジーデップ・アドバンスは主にAIを対象としたシステムインキュベーション事業を行う企業である。システムインキュベーション事業とは、主にAIやビジュアライゼーション、ビッグデータを取り扱う研究者や開発者のシステム環境上の課題に対して、最先端テクノロジーを用いたサーバー機や同社オリジナルソリューションなどを提供することにより、今までとは違ったアプローチで研究や開発のスピードアップを支援するサービスである。代表取締役CEOの飯野匡道(いいのただみち)氏が、2007年に米国ネバダ州で開催されたSupercomputing ConferenceでNVIDIA Corporation<NVDA>の製品を知り、小さなカードがパラレルコンピューティングの概念を大きく変える可能性を体感したことがNVIDIAとの取引の契機となり、その後の快進撃のドライバーとなった。

ジーデップ・アドバンスの事業は「システムインキュベーション事業」の単一セグメントだが、「DXサービス」及び「Service & Support」の2つのサービスを提供している。主力の「DXサービス」では、AIソリューションサービスで、AIサービスを開発・運用する顧客を対象として、Deep learningを用いたAIの開発や運用に適した仕様のハードウェア、ソフトウェア、ツールを組み合わせたターンキーシステム(電源を入れたらすぐに使えるシステム)を開発・組立・販売する。またビジュアライズソリューションサービスでは、映像や画像を用いるコンピュータ処理を行う顧客を対象として、CADやCAE、コンピュータグラフィックスの制作やデジタルサイネージで利用するグラフィックワークステーションの組立・販売などを行う。このサービスは売上構成比の91.9%(2024年5月期)を占める。「Service & Support」は、同社が提供するソリューション(ハードウェア、ソフトウェア、構築ノウハウ)に対して、ハードウェアの保守だけではなく継続的な環境のアップデートを通して、常に最新で安定したシステムとして利用するためのオプショナル運用支援サービスを提供する。当サービスの売上構成比は、8.1%(同)である。

ジーデップ・アドバンスは、NVIDIAをはじめとするグローバルプロセッサメーカー4社から認定された高い技術力と、グローバルITベンダーとの連携から生まれる企画力・製品調達力が源泉となり、高い競争優位性を築いている。強み・特徴としては、1)最新テクノロジーと独自のギミックを組み合わせた最適解の提案、2)ソリューション提供形態の多様性、3) Service & Supportによる顧客継続性、4)スモールマス展開を見据えた案件対応、5)他社との差別化を実現する独自のポジショニング、がある。

現在の市場環境は、生成AI需要の爆発的増加を背景とするGPU計算リソースの強い需要、AI環境の大型化に伴うクラウドの拡大といった追い風が続いており、2027年5月期を最終年度とする中期経営計画は、売上高で8,415百万円、営業利益で1,055百万円を目指している。

同社は、独自性のある製品を展開しており競合は少ない。国内上場企業には、厳密な意味での類似企業は存在しないものの、AI開発の先進ユーザー向けハード、ソフト、ソリューションを提供する類似企業としては、VRAIN Solution<135A>、HPCシステムズ<6597>などがある。特にVRAIN Solutionが増収率、極めて高いROEなどで参考にされる可能性があり、VRAIN SolutionのPER(株価収益率)は、40倍程度で評価されている(売上高予想の開示のみで利益予想非開示のため前期と同様の利益率で試算)。その他、同社の主要顧客がAI関連企業ということも鑑みれば、AI企業と同様に規模拡大が進むであろうことが想定でき、同関連と比較されることも十分に考え得る。実際、増収率は遜色ない。ブレインパッド<3655>、PKSHA Technology<3993>、Appier Group<4180>、HEROZ<4382>、エクサウィザーズ<4259>、Ridge-i<5572>、ABEJA<5574>などをピックアップしてみたが、特に利益面で規模感の近いHEROZ、エクサウィザーズ、Ridge-i、ABEJAの平均PERは優に100倍超。また、同社と協業を発表したRidge-iのそれは80倍に迫る。

株主還元としては、配当は重要な株主還元施策として捉えており、毎期配当性向を上げていく方針。

<HM>

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