*12:59JST 美樹工業 Research Memo(9):2028年12月期に売上高400億円、営業利益率5.7%を目指す
■美樹工業<1718>の中期経営計画
1. 中期経営計画「2024-2028」
建設業界全体で、高齢化、人材不足、労働時間規制、資材高騰、急激な円安といった一朝一夕には解決困難な問題が山積しており、これまでの当たり前が通用しなくなる時代となった。こうした大きな転換期を迎えたことから、同社は時代の挑戦者として、2024年スタートの中期経営計画「2024-2028」を策定した。基本方針として事業基盤の強化、人を大切にする経営、戦略的投資計画を掲げ、事業基盤の強化では、専門性と総合力を発揮するゼネコン・サブコン融合型の業態となって重点分野の受注拡大を進める方針である。人を大切にする経営では、エンゲージメント強化、人材教育・育成の充実、社内DX化推進の加速によって人を生かし社員が誇れる会社を目指す。戦略的投資計画では、「1%ルール」を策定してスタートアップ事業や研究開発など社内公募型PJの事業化、人事部門強化や業務改善策など人への投資、M&Aによる領域拡大投資を推進する。
これにより、2028年12月期に売上高400億円、営業利益率5.7%(営業利益額22.8億円)を目指すこととなった。売上高に関しては、中期経営計画スタート前の2023年12月期に対して80億円ほどの積み上げとなるが、大型物件工事の増加とM&Aによって達成する計画である。M&Aの実現については今のところ不透明だが案件は多く、中期経営計画中に1~2件は達成可能と考えているようだ。営業利益率に関しては、中期経営計画前の営業利益率に対して1.6ポイント改善する必要があるが、大型工事を含めて好採算のリフォームやリノベーションを拡大することで達成する方針のようだ。さらに、中期経営計画の先に「Miki Next Challenge 500」を設定し、目標である売上高500億円、従業員数500人、新卒社員モデル年収500万円の早期実現も目指す。
基本方針は順調に進捗
2. 進捗状況
足元の進捗としては、事業基盤の強化では、ゴミ処理場で新たな大型受注を実現し、太陽光発電で蓄電池分野へ参入を決定、賃貸収益マンション事業の着実な成長に取り組んでいる。人を大切にする経営では、社内の全面禁煙など健康経営や職場環境改善を推進、新人にメンター・メンティ制度を導入、階層別研修など研修制度を見直し、ICTやドローンの導入によって現場効率の改善に向けた取り組みを強化した。戦略的投資計画では、スタートアップなど社内公募型プロジェクトは取り組み中、人事評価制度と賃金制度の改定は2026年12月期の適用を目指して進行中、M&Aの実現やシナジーの発揮はヒョウ工務店などで着実に進捗した。また、経営体制の効率化、コンサルティングによる顧客接点の強化、提案営業力の強化を目的に、非連結子会社の(株)エスデイ設計室(大阪府)が(株)ライフデザイン研究所(大阪府)を吸収合併した。
このように、基本方針は順調に進捗していると考えても問題なさそうだ。さらに、建設事業で工場や病院など大型工事の受注が進んでいるうえ、新規進出した東京において建築工事を受注した模様である。太陽光発電事業では蓄電池分野に参入、住宅事業でも人気の賃貸収益マンションの在庫を積み上げている。これにさらなるM&Aが加われば、中期経営計画の売上高は目標達成に向けて大きく近付くことになると思われる。ただし、様々なコストが上昇していることから、営業利益に関しては引き続き注視する必要があろう。
■株主還元策
配当性向30%以上を基準に、増配余地は大きい
同社は、剰余金の配当に関して、株主還元を経営上の重要課題の1つと考え、連結配当性向30%以上を基準に、安定的な配当の実施及び将来の事業拡大のための内部留保などを勘案して決定することを基本方針としている。また、内部留保については、積極的な投資と事業基盤の拡充を通じて企業価値の持続的向上を図り、その成果を株主へ還元できるよう努めている。これらを総合的に勘案したうえで、2024年12月期の1株当たり配当金を200.0円(中間配当金100.0円、期末配当金100.0円)とした。2025年12月期の1株当たり配当金については同額の200.0円(中間配当金100.0円、期末配当金100.0円)を予定している。なお、通期の業績が会社予想に向かって順調に進捗することを確認できれば、連結配当性向30%を視野に増配を検討する可能性もある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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