ビジネスの場で初めて会った相手と信頼関係を築くにはどのようにすればよいのか。例えば、富裕層や多忙なビジネスパーソンは、深く付き合うべき人かどうかを素早く判断する観点があるのだという。新刊『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』が話題の、元Googleの人材開発責任者で経営コンサルタントのピョートル・フェリクス・グジバチ氏が、雑談を通じて信頼関係を結ぶ方法について、具体的に解説する。
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大企業の社長や幹部クラスの人たち、あるいはビジネスで成功した起業家や大病院の医師、売れっ子の弁護士など、いわゆるエグゼクティブとか富裕層と呼ばれる人たちには、ひとつの共通点があります。雑談を通して、「スクリーニング」(ふるい分け)をしていることです。
エグゼクティブを相手にビジネスをする際には、目の前のアジェンダより先に、雑談の段階でこちらをスクリーニングしていると考える必要があります。ビジネスで成功して高い収入を得ているエグゼクティブは、「お金の自由度」が高い人たちですから、お金を払って手に入れられるものと、お金を払っても手に入れられないものが明確に見えています。彼らが求めているのは、自分にとって「新たな刺激」となる情報や知恵、アイデアなど、お金では買えないもの、お金の価値を超えたものです。
雑談に使える時間はわずか5分程度ですから、その短い時間でどのくらい新たな刺激を提供できるかが、信頼関係を結ぶための最初の一歩となります。多忙な彼らは「タイム・イズ・マネー」の考え方が徹底していますから、のんびりと天気の話をしていたのでは「時間泥棒」と見られて、即退場となってしまうのです。
「面白い! 会ったことがない人だ」
「こういう情報も持ってるんだ!」
「もっと話をしたい!」
相手にそう感じさせるような価値のある話が提供できれば、彼らは興味を持って身を乗り出し、本題にも真剣に耳を傾けるようになります。彼らは雑談の段階で、「敵か味方か」、「戦力になるか」、「腹を割って話せるか」などの観点から相手をスクリーニングして、今後の付き合い方を含めて判断しています。ここで相手が「ハマる」状況を作ることが最大のポイントです。
相手が興味を持ってくれれば、それがビジネスにつながるだけでなく、次なる展開が生まれます。エグゼクティブは自分のコミュニティを持って、常にネットワークを広げて、情報のアンテナを張り巡らせています。こちらに対して、「面白い」とか「信用できる」、「信頼できる」と考えるようになれば、仲間として迎え入れられることで、たくさんのエグゼクティブとの交流の輪に加わることができます。日本でも海外でも、圧倒的な結果を出しているビジネスマンの多くは、こうしたチャンスを確実にモノにしています。