もっとも、関係を持つ前に相手の夫婦関係が破綻していたような例外的な場合であれば、こうした権利や法的に保護される利益はないので、不法行為にはなりません。ご質問によると、例外的場合ではないようです。ご主人の生存中は夫婦関係の平和は維持され、精神的苦痛も感じなかったはずです。
ただし、婚姻共同生活の平和維持という観点からは、程度はともかくその危険性を生じさせていたことになります。しかも、死亡後に不貞が判明し、裏切られた悔しい思いを感じるのは自然な感情ですから、あなたの精神的苦痛も否定できないでしょう。
ご心配の時効ですが、不法行為の時効は、不法行為による損害と加害者を知ってから3年間。この状況では、最も批判されるべきはやはり、当の不貞配偶者です。ほかに、夫が妻の浮気相手に請求する場合では、美人局まがいの例もあることから、一般に不貞行為の相手方への慰謝料請求を認めることに対して反対も少なくなく、金額も多くの場合、さほど高額にはなりません。
【プロフィール】竹下正己●1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2019年7月5日号