長引くコロナ禍で、多くの企業や学校がリモートワークやオンライン授業を導入している。通勤・通学にかかる時間を節約できたり、満員電車のストレスを軽減できるといったメリットがある一方で、自宅にこもりきりになることで、逆に心身に異常をきたす人も多いという。『パニック障害 大丈夫!かならずよくなる』(河出書房新社)の著者で、鍼灸師・心理カウンセラーの影森佳代子さんに、不調を和らげる具体的な対処法を聞いた。
終わりの見えない自粛生活で、心身の不調を訴える人が急増している。影森さんが運営する「鎌倉ひまわり鍼灸院」には、日々そうした人々が多く来院するという。ストレスと不眠に悩む40代男性・Aさんもその一人だ。
「昨年4月から職場が100%リモートワークになり、自宅の自室にこもりきりになることが増えました。中間管理職という立場もあって、オンライン会議が切れ目なく入るため、昼食をゆっくり取る時間もありません。コロナ禍前は、通勤や商談などで外出することもありましたが、ここ1年は長時間パソコンに向かう毎日です。
こんな生活が続いて、上司との評価面談や部下のマネジメント、プレゼンなどで忙しさがピークになった頃から、夜中に動悸がして目が覚めることが増えていきました。動悸は朝まで収まらず、寝不足で仕事に集中できない日々が続いています」(Aさん)
50代女性のBさんも同じような状況に苦しみ、藁にもすがる思いで影森さんのもとを訪れた。
「コロナ禍前は、休みの日に旅行に出掛けたり、週に2~3回は外食するなどアクティブに過ごしていたのですが、1年以上リモートワークが続き、缶詰状態の毎日に強いストレスと不安感を感じるようになりました。特に悪化するきっかけになったのが今年2月。急に左腰に痛みを感じて変な“不安スイッチ”が入ってしまったんです。能天気な性格で体力にも自信がある方なので、今までなら気にするような事ではないのですが、考え出すと、『重い病気なのではないか』という不安感に度々襲われるようになって……。
次第に、ソワソワしてじっとしていられなくなったり、パソコンのモニターを前にすると『イーーーッ』となってしまったり、普段とは違う別人のような症状に苛まれる日々が続いています」
なぜこうした症状が表れるのか。影森さんが話す。
「AさんやBさんのように働き方が大きく変わり、仕事とプライベートの切り替えが上手くできず交感神経が刺激され続ける状態が続くと、自律神経のバランスが崩れ、不眠や動悸、胃もたれ、めまい、不安感、頭痛などの症状を引き起こします。Bさんのような日頃アクティブに暮らしていた人の場合、これまでの自分とのギャップにさらに不安感を感じ、悪循環に陥ることも珍しくありません」