横並びの量産型を装っていたほうがいい
実はこの「本当に好きなものは隠す」という行為は、消費のみならずキャリア選択にまで及んでいる。例えば学生との面談で、本当は望む進路があるのにそれを言わなかったりとか。
こうしてしまう感覚も、やはり多くの人が共感できるところと思う。本当に意思が固まった状態じゃないと、人には言えないことがあるものだ。
ただし、繰り返しになるが、今の若者はその隠し方が巧妙なのだ。このことは、キャンパス内だけでなく職場でも見られる。例えば、上司との1on1ミーティング。希望する配属先はあるかと訊かれたとき、本当は気になる部署があるのに、周りに合わせた当たり障りのない部署、あるいは一般的に人気の部署の名を挙げたりするのだ。上司としては、これではもうどうしようもない。
若者側の感覚としては、好きなものがバレたり、本心を知られたりすることで、自分の特性を評価されることを防ぎたい気持ちが強いのだと思う。
今の時代、人はすぐ趣味嗜好で人を評価しようとする。例えば、希望部署を言えば「そういうタイプか」と評価され、推しを言えば「そっち系だったんだ」と評価が確定される。 自分はそんな風に評価されたくないくせに、人のことは評価付けしようとする。だから余計にタチが悪い。
だったら何も言わず、無色透明を保っておいたほうがいい。そのためには、好きなものや興味あることも含めて、横並びの量産型を装っていたほうがいい――。
そう思う背景として、今の若者は自分の評価が確定するのを避けたい気持ちが強いのだろう。ただ、仮にそうやって好きなものや本心が知られたとして、その後一生その設定で生きていかなければならないということはないのだが……。
*金間大介・酒井崇匡著『仕事に「生きがい」はいりません 30年の調査データが明かすZ世代のリアル 』(SBクリエイティブ株式会社)より一部抜粋して再構成
(第1回から読む)
【プロフィール】
金間大介(かなま・だいすけ)/金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授、一般社団法人WE AT(ウィーアット)副代表理事、一般社団法人日本知財学会理事。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士〈工学〉)、バージニア工科大学大学院、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学准教授、東京農業大学准教授などを経て、2021年より現職。博士号取得までは応用物理学を研究していたが、博士後期課程中に渡米して出会ったイノベーション・マネジメントに魅了される。それ以来、イノベーション論、マーケティング論、モチベーション論等を研究。『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』(東洋経済新報社)『静かに退職する若者たち』(PHP研究所)など、著書多数。
酒井崇匡(さかい・たかまさ)/博報堂生活総合研究所主席研究員。2005年博報堂入社。マーケティングプラナーを経て、2012年より博報堂生活総合研究所に所属。 デジタル空間上のビッグデータを活用した生活者研究の新領域「デジノグラフィ」を様々なデータホルダーとの共同研究で推進中。 行動や生声あるいは生体情報など、可視化されつつある生活者のデータを元にした発見と洞察を行っている。