*10:36JST 日本和装 Research Memo(6):和装品市場拡大のために様々な施策を実行。ECサイトでの顧客基盤の拡大も目指す
■中長期の成長戦略
日本和装ホールディングス<2499>では、中期経営計画や定量的な数値目標は発表していないが、業績拡大に加えて、日本の伝統である和装品(きもの)市場の拡大に向けて、既存事業では質の充実と量の拡大、さらにECサイトでの顧客基盤の拡大を目指し、以下のような様々な施策や応援活動を推進していく計画だ。
● 今後の注力施策や活動
(1) モデルの冨永愛をイメージキャラクターとして続投
今年も、世界的なトップモデルで、近年では俳優としての活躍も著しいモデルの冨永愛をイメージキャラクターとして継続する。同氏は、社会貢献活動や日本の伝統文化を国内外に伝えるグローバルな活動も注目されており、また素顔写真をカバーデザインに採用したエッセイ本で飾り気のない言葉が読者から支持を得るなど、多くの女性の憧れの存在となっている。現在出演中のNHK大河ドラマ「べらぼう」で華やかな時代衣装を披露する一方で、同社のTVCMでは現代のきものを素敵に着こなし、きものの魅力を伝えている。一人二役を演じたCMでのユーモラスな表現や、同氏とお揃いコーデのパペットも話題となっている。
(2) 「お試し2回無料着付け体験」を全国で開催
同社では設立以来、受講料無料で「着付け教室」を続けてきたが、2024年春、参加ハードルを低くした全3回の「着付け体験」を行い、好評を得た。2025年にはさらにバージョンアップした「お試し2回無料着付け体験」を全国で開催する。2回の教室で同社オリジナルの「簡単」「早くてラク」「美しい」着付けを来訪者に体験してもらったあとに、希望者には受講料無料で通える本教室(5回)を用意している。
(3) 引き続き付加価値の高いイベント・ツアーを企画
a) 初春ツアー
国宝や世界遺産に登録された場所を訪ね、歴史・文化・伝統技などに触れる産地ツアー。工房見学やグルメも楽しめる。
b) 産地応援ツアー
産地に赴き、伝統技術や産地ならではの作品を見学し、職人との交流も含めて、きものの産地を盛り上げる企画。
c) ブリリアンツ地区大会
同社が毎年開催している「きものブリリアンツ全国大会」への出場権をかけたイベント。全国各地で多くの卒業生が参加している。
(4) EC事業「KAERUWA」の拡充
2024年1月に顧客層の拡大を目指す事業戦略としてECサイト「KAERUWA」を開設した。若年層をターゲットに、気軽に和装を楽しめるサイトを目指し、リーズナブルな価格帯のきものや帯・小物などを販売している。また、品質の良さを求めるユーザー向けのこだわりの小物、廉価なオリジナル製品の投入など幅広い展開も推進しており、2025年はさらなるECサイトの拡充を目指している。このEC事業「KAERUWA」には以下のような特徴がある。
a) 初心者向け
きものを気軽に着られるように、しわになりにくく自宅で洗濯できる東レ開発の「シルック(R)きもの」や、仕立て済の「プレタ着物」などを中心に販売している。カジュアルからセミフォーマルまで幅広く取り揃えており、初心者が受け入れやすい商品ラインナップとしている。
b) シーンを提案
「お呼ばれ」「イベント」といった行事に合わせてきものを選べるリンクを設置し、初心者でも選びやすい工夫をしている。
c) 通常より多い「9パターン」のサイズオーダー
年間仕立て数トップクラスの日本和装「糸の匠センター」監修の下で、様々な体型の顧客に満足してもらえるようにこだわっている。
d) EC向け廉価品の投入
今後、ECサイト専用の廉価製品の投入も計画しており、これにより若年層を中心に「和装品市場」の拡大(裾野の拡大)を目指す。
(5) CSR活動
同社は様々なCSR活動にも積極的に取り組んでいる。以下は最近の実例である。
a) 国産養蚕支援「Reborn The Silkプロジェクト」
きものや帯の原材料に欠かせない生糸を作る養蚕は、明治時代には世界に誇る一大産業だったが、近年は減少が進み、ほとんどを輸入品に頼っている。同社では大切な伝統技術や文化の継承のために、国内の養蚕業を支援する一助になればという想いから、2023年に「Reborn The Silkプロジェクト」を立ち上げた。幻の品種である国産蚕「太平長安」を復刻し、約1年間にわたって蚕の飼育や製糸に直接携わり、最終的に製品化※されたきものや帯を紹介して販売仲介するプロジェクトは3年目に入った。このプロジェクトを継続することで日本の養蚕業の理解の輪を広げていく計画だ。
※ きものや帯はブランド名「Arcsilk(アルクシルク)」(商標登録出願中)として製品化される。ARC(アルク)はフランス語で「架け橋」を意味する。このブランドが、日本文化のきものを未来へつなぐ「架け橋」となるように、さらにきもの姿で「歩く」人たちがもっともっと増えるように、という想いが込められている。
b) 「浴衣の着付け」出前授業を提供
同社は、CSR活動の一環として、全国の拠点(局)がある地域限定で、中学校・高校への浴衣の着付け出前授業を無償で行っている。2022年6月から2024年12月までに、東京、千葉、横浜、静岡、名古屋、岡山など合計64校9,000名の生徒に着付けの授業を行った。家庭科の教科書から得る座学だけではなく、実際に浴衣に触れて自分で浴衣を着られるようになることで「和装」への関心が高まることや、浴衣に触れた中学生・高校生たちが「豊かな和の文化が残る日本社会」を形成していくことを同社では期待している。実際に授業を受けた生徒たちからは、「難しかったけれど楽しかった」「先生が親切に教えてくれた」「初めて着てみたけれど、似合っていて嬉しかった」などの声が寄せられ、好評であった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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