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【最新金融用語解説】名目GDPと一般GDPの違い

 国の全般的な経済状況を見る上で、最も分かりやすい指標がGDPである。GDPとは国内総生産(Gross Domestic Product)のことで、国がある期間において生み出したモノやサービスの付加価値の合計である。この場合の付加価値とは、モノやサービスの生産額から、原材料などの中間生産物の額を差し引くことによって得られる。

 日本では、内閣府が、総務省の家計調査や財務省の法人企業統計といった、さまざまな統計データをベースにして算出し、公表している。GDPの計算方法は国連の定める国際基準に準拠しているため、各国の経済規模や経済成長率を比較しやすいのも特徴だ。

 そもそも経済成長率とは、GDPを前期と比較した伸び率のことである。経済成長率が高い(=伸び率が高い)状態は、企業の収益や個人の所得が伸びている状態で、景気が良いと判断できる。逆に、経済成長率が低い(=伸び率が低い)ときは、景気が伸び悩んでいることを表わしている。経済成長率がマイナスであれば、その国の経済は縮小していることになる。

 ただし、国の景気動向をより正確に判断するためには、物価を考慮しなければならない。経済活動の規模が前期と変わらなくても、モノやサービスの価格が3%上昇すれば付加価値の合計も3%増える。したがって、GDPの伸び率もプラス3%となり、経済は3%成長していることになってしまう。

 そこで、正しい経済の実態を把握するために、物価動向を考慮して調整したデータが必要となる。この物価を加味したデータを実質GDPと呼び、物価を考慮していないデータである名目GDPと区別している。例えば、経済活動の規模が前期と変わらないが(=±0%)、物価が前期比3%上昇していれば、名目GDPはプラス3%となるが、実質GDPは物価上昇分の3%を除外するため0%となるのである。

 日本の経済は、2000年以降、物価がマイナスとなるデフレが続いたため、名目GDPの伸び率がマイナス(=経済の規模が縮小)となっても、実質GDPがプラスになる(=経済が成長している)という、“異常”な状態が発生した。名目GDP伸び率のマイナス幅よりも、物価のマイナス幅の方が大きかったからだ(名目GDP伸び率が-1%で物価上昇率が-2%であれば、「-1%」-「-2%」=「+1%」となる)。

 そこで、政府および日本銀行は、日本経済を正常な拡大基調に乗せるために、現在、名目GDPを増やすとともに、物価をプラス2%程度に安定させることを政策目標としている。

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