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【日本株週間見通し】日経平均は戻りを試すか 海外要因にも注意

 米国では政府閉鎖危機が一先ず回避された一方、債務上限問題は依然として解決しておらず、米連邦政府のデフォルトリスクが残る。しかし、これは民主党と共和党との間のいわば政治的チキンレースである。デフォルトなど誰も望んでいないことは確かで、最終的には避けられる問題と考える。過去にも同様の背景から相場が一時的に調整したことはあるが、長く影響をもたらしたことはなく、過度な不安は必要ないと考える。

 他方、中国の恒大集団をきっかけに台頭した不動産業の資金繰り問題については複雑だ。中国の大手銀行に占める不動産企業向け融資の割合は1割にも及ばないほか、有利子負債の自己資本に占める割合も大きくない。また、同国では銀行の大半が国有企業であるため、金融システムに波及する可能性は低く、政府もそうした事態はさすがに回避するはず。そのため、2008年のリーマンショックのような世界的な金融危機に陥ることはないだろう。

 一方、習近平政府の掲げる“共同富裕”の達成に向けた動きから、政府が安易な救済策を施すことは考えにくく、ソフトランディングとはいえ、不動産業はバブルが崩壊し縮小方向に向かうことが想定される。そのため、同国の景気減速という実体経済への影響が懸念される。また、政府の環境規制強化などをはじめ複数の事情が相まって、中国では深刻な電力不足の問題が起きている。工場の操業停止など、こちらも実体経済への影響が警戒される。

 中国経済の景気減速や世界的なインフレがもたらす実体経済への影響を懸念し、10月下旬から本格化する日米主力企業の7-9月期決算で示される先行き見通しにも警戒感が伴う。外部環境の不透明感が強く、相場が調整色を強めるなか投資家心理も悪化しており、企業決算を確認するまでは積極的な買いが期待しにくい。下値模索には至らずとも、少なくとも上値抑制要因にはなりそうだ。

 一方、先週末に日経平均は29000円を大きく割り込んだが、この水準から、一段と日本株が下押しすることは考えにくい。先週の日経平均は週間で1477.74円下げ、週末10月1日だけで681.59円も下落した。しかし、週末は国慶節入りに伴い、中国・香港市場が休場だったことで、アジア株売りの動きが東京市場に集中した可能性がある。これが短期筋の先物主導での売りを強め、下落に拍車をかけたとも考えられよう。そのため、オーバーシュート気味に突っ込んだ印象を否めず、短期的にも押し目買いが入りやすいだろう。

 またこの先は、自民党総裁選で勝利した岸田新総裁による組閣人事や、衆院選に向けた経済対策への期待などが日本株の下値を支えると想定される。改革色が強く海外でも人気の高かった河野太郎氏が敗れ、安定感のある岸田文雄氏が勝利したことで、日本政治に対する海外投資家の見方がややトーンダウンしたような印象は否めないが、今後の岸田新内閣の動き次第では、再評価の可能性も残される。また、機運が高まれば、衆院選に向けた株高アノマリーへの意識も強まる。外部環境の不透明感継続から短期的な急反発は見込みにくいものの、年末まで視野を広げれば、一段のダウンサイドよりはアップサイドの方が見込める局面と捉えておきたい。

 短期的な物色動向については、国内外の機関投資家などが主体的に手掛ける時価総額の大きい東証1部の主力株に関しては、7-9月期決算を確認するまでは大きな動きは期待しにくい。一方、中小型を対象にDXや脱炭素などのテーマ性のある銘柄の押し目買いには妙味がありそうだ。また、先週に7社あった新規株式公開(IPO)銘柄についても、需給重視で物色が活発化しそうだ。そのほか、小売企業の6-8月期決算が本格化するため、決算プレーも増えてきそうだ。

 なお、今週は10月4日に米8月製造業受注、OPEC(石油輸出国機構)プラス閣僚級会合、ノーベル医学生理学賞発表、5日に米8月貿易収支、米9月ISM非製造業景況指数、ノーベル物理学賞発表、6日に米9月ADP全米雇用統計リポート、ノーベル化学賞発表、7日に8月景気動向指数、9月都心オフィス空室率、ノーベル文学賞発表、8日にオプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出、8月家計調査、9月景気ウォッチャー調査、米9月雇用統計、ノーベル平和賞発表などが予定されている。

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