現在までにAIDで推定1~2万人が生まれているとされるが、産婦人科医で岡山大学大学院保健学研究科教授の中塚幹也さんは「正確な人数のデータはなく、把握することができない」と語る。
「いわゆる精子バンクや卵子提供エージェントは日本国内でも乱立しており、精子提供に至っては、SNSを利用して個人間でも行われているのが現状です。水面下で行われるものが多く、把握しきれないのです」(中塚さん・以下同)
配偶者ではない人の卵子や精子を必要とする人が増えているのはなぜか。その理由は、不妊ばかりではない。
昨年の調査結果では、日本におけるLGBTQの割合は8.9%。つまり、約11人に1人が性的マイノリティーということになる。中塚さんは特に、トランスジェンダー(生まれてきたときの体の性別と、本人が自認する心の性別が一致しないこと)の夫婦のケースについて語る。
「例えば、戸籍上の性別を女性から男性に変更したトランス男性(※)が女性と結婚した場合。妻が子供を産みたいと思ったとき、夫は精子を持たないので、精子バンクを利用することになります」
【※FtM(Female to Male)とも。女性の体と男性の心を持って生まれた人が、心身の性別を男性に一致させること】
一方、ハリウッド女優のジョディ・フォスターは自身がレズビアンであることをカミングアウトしており、現在は女性のパートナーと2人の子供と暮らしている。いずれも精子の提供を受け、体外受精で授かった子供だという。