各社ごとに具体的な数字を見てみると──。
名古屋鉄道であれば、社外取締役の年間報酬総額は2200万円。3名の社外取締役の報酬を均一と仮定すると、1人あたり733万円となる。
アルコニックスの社外取締役の年間報酬総額は2700万円、社外取締役は4名で平均値は675万円。日本郵船は総額5700万円、社外取締役が3名のため1900万円という数値となる(すべて平均値)。
社外取締役に支払う高額報酬の理由を「ゆう司法書士事務所」代表の松本光平さんに聞いた。
「経営戦略やリスクマネジメントなど知識や経験に基づく専門的な能力を生かした、企業への貢献の対価といえるでしょう」
前出の森永さんが言う。
「有名人の側からすれば常勤の必要がなく、短時間の労働で多額の収入が得られるうえに兼任が認められているのは、大きなメリットです」
なるほど、社外取締役を指名する側もされる側もメリットがあるというわけだ。
仕事ぶりはいかがだろうか。再び、菊間さんを起用したコーセーに聞いた。
「企業法務をはじめとした弁護士としての高い専門知識から、当社の経営改革課題に指導、助言があり、専門的かつ多面的な課題解決につながっています。
また、サステナビリティーやダイバーシティーにかかわる課題に対して、幅広い視点から積極的に意見や課題提起、解決策の提案があり、社内の議論の活性化や活動の多様化などに貢献いただいています。女性活躍促進についても多くの助言をいただき、その結果として昨年度、当社は『なでしこ銘柄』(※女性活躍推進に優れた上場企業を経済産業省と東京証券取引所が共同で選定したもの)に選定されました」(岩﨑さん)
いいことずくめのようだが、もちろんデメリットもあると森永さんは指摘する。
「社外取締役も経営陣のひとりなので、会社が不正を行ったときなどには損害賠償請求の当事者になり得ます」
収入面のメリットは、責任と背中合わせでもある。
取材・文/藤岡加奈子
※女性セブン2022年7月21日号