ビッグモーターの騒動は世間に「大企業でも簡単に信用してはいけない」という不信感を与えた。一方で地方に目を向けると、知名度こそ低くとも世界トップの技術を誇る企業がある。小さくともキラリと光る“成功の秘訣”とは──。
「これまで世界62か国、400件以上のプロジェクトをこなしてきました。他社の追随を許さない弊社の技術は世界一、まさにオンリーワンであると自負しています」
そう語るのは、香川県木田郡に本社を構える日プラの敷山靖洋社長だ。
同社はアクリルパネルと呼ばれる透明な板を用いた大型水槽の設計や製造などを行なう。旭山動物園、沖縄美ら海水族館、ドバイ水族館など国内外の有名施設で採用され、世界シェア7割を誇る。水族館用大型アクリルパネル「アクアウォール」は世界最大のギネス記録を何度も更新した。
1976年に山口県岩国市で創業したビッグモーターはのちに東京に本社を移し、従業員数6000人、300店舗という業界最大手に成長したが、顧客を裏切る不祥事で経営の危機を迎えている。
対して地方に根を張ったまま、世界に羽ばたいて躍動する優良企業のひとつがこの日プラだ。
同社は現社長の父で、化学メーカーに勤務していた敷山哲洋氏が1969年に創業した。当初から、柱のない世界初のアクリル製回遊水槽を納入するなど独自技術を売りにしたが、地方というハンデはぬぐえなかった。
「大きな水族館の話があっても受注するのはいつも大手で、弊社は大手がやらないような小さな仕事ばかり。上場企業の大手と田舎の加工屋の対決で、小さなアリが巨大なゾウに挑んでいるようなものでした」(敷山社長)
閑古鳥が鳴くなか、チャンスは海の向こうからやって来た。1992年、米モントレーベイ水族館から打診があり、同水族館の増築工事入札に参加することになったのだ。