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ネット銀行やネット証券などの「デジタル遺産」の把握は難しい 見落としたままだと申告漏れの指摘も

仮に家族がデジタル遺産の存在を察していても、簡単に発見できないという(イメージ)

仮に家族がデジタル遺産の存在を察していても、簡単に発見できないという(イメージ)

 親の遺産を相続する際に行う財産調査で困難が伴うのが、ネット銀行やネット証券などの口座にある「デジタル資産」だ。相続関連の著書が多い税理士法人レディングの木下勇人税理士が言う。

「リアル店舗のある金融機関だと、取引残高報告書などの書面が手がかりになるが、ネット証券・銀行の場合、報告書なども電子交付が多く、家族が口座の存在に気づきにくい。

 一方、税務署のほうが先んじて故人のネット取引を把握できる可能性はある。年20万円超の利益が出た株取引ならば確定申告が必要で履歴が残るし、税務署は銀行や証券会社とのやり取りのなかで、故人の特定口座からの源泉徴収なども把握できる。家族がデジタル資産を見落としたまま相続手続きを完了し、納税後に申告漏れを指摘されてしまうこともある」

 仮に家族がデジタル遺産の存在を察していても、簡単に発見できない。

「口座の履歴を確認するにはスマホやパソコンのロックを解除し、メールや金融機関のアプリを開いてみるしかありませんが、ロック解除やログインのパスワードがわからないケースが少なくない」(木下氏)

 そうした状況に陥ると、かなり面倒な作業になると木下氏が続ける。

「携帯ショップやメーカーは、本人以外はたとえ遺族であっても対応しないため、本人が書き残したメモ等を探すしかない。見つからなければ誕生日などから試してみるといったやり方になる」

 そんな事態を避けるには事前の準備が大切だ。

「利用するネット証券会社名はもちろん、暗証番号・パスワードはまとめて書き残してもらうこと。生前に知られることに抵抗感があるようなら、鍵付きの引き出しなど1か所にまとめ、その場所だけでも教えておいてもらうとよいです。遺言やエンディングノートに残す方法もある」(木下氏)

※週刊ポスト2023年9月15・22日号

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