日経平均は史上最高値を更新後、急落も見せるなど乱高下の展開が続いている。また、新NISA(少額投資非課税制度)の投資ブームでは、日本株よりも米国など外国株に連動する投資信託に人気が集中しているが、その考え方でいいのか。
そうした問いを考えるうえで注目の人物がトルコ出身のエコノミスト、エミン・ユルマズ氏(44)だ。YouTubeチャンネルの再生回数は1000万回を突破。「日経平均30万円時代」の到来を予測して話題だが、大胆な分析の根拠とは──。【前後編の前編】
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日経平均株価が4万円を突破して、「4万円超えはバブルでは?」「高値掴みが怖い」と思う人もいるでしょう。
しかし、私の考えでは、日経平均は2025~2026年に「5万円」を突破し、2050年には「30万円」に達するような“黄金期”に突入しています。個人投資家が新NISAの恩恵を最大限に受ける方法は「日本株」への投資だと考えます。
〈そう断言するエミン氏は異色の経歴の持ち主だ。トルコ・イスタンブール出身で、16歳の時に国際生物学オリンピックで優勝すると、1997年に日本へ留学。東京大学工学部、同大学院を経て、2006年に野村證券に入社した。M&Aアドバイザリー業務などを担当し、退社後は会社四季報や日経新聞を分析して投資ノウハウを提供する「複眼経済塾」でも勤務した。日本株に精通するエミン氏に“黄金期”を予測する理由を聞いた〉
日本経済の停滞は「失われた30年」を経て、ようやく35年前の最高値を超えた段階。「黄金期を迎える」と言われても信じ難いかもしれません。
注目したいのは、「地政学的要因」です。
そもそも、戦後の日本経済が発展できた背景には米ソ冷戦があった。米国は終戦直後、財閥解体を断行したが、冷戦下では貧しかった日本が共産主義圏に加わるリスクを恐れ、経済政策を転換。経済的支援に回りました。結果、日本は1950年の朝鮮戦争特需で好景気を迎えた。そしてバブル景気はベルリンの壁やソビエト連邦の崩壊、すなわち米ソ冷戦の終了とリンクして崩壊しました。
それが今や米ソ冷戦に代わる「米中新冷戦」と呼ばれる局面を迎えている。私は、この新冷戦体制が日本経済にとって米ソ冷戦以上の追い風となると考えています。