アマノ(6436):市場平均予想(単位:百万円)
企業概要
アマノ(6436)は、就業時間管理システムの国内最大手企業。就労管理情報システムのほか、駐車場・駐輪場システム、また集塵機、清掃機器のクリーンシステムも展開しています。
事業セグメントは、大きく「時間情報システム事業」と「環境関連システム事業」の2つで構成されています。
【1】時間情報システム事業
主力は「時間情報システム事業」で、売上高の77%を構成します。この事業部門では、駐車場・駐車場管理システムや駐車場運営受託を行う「パーキングシステム(53%)」、タイムレコーダーや勤怠管理システムを手掛ける「時間情報事業(24%)」、タイムレコーダーを手掛ける「時間管理機器(2%)」から成る3つのサービスを提供しています。
【2】環境関連システム事業
集塵機や産業用掃除機などを提供する「環境関連システム(15%)」、洗浄機や清掃ロボットなどを展開する「クリーン・ロボットソリューション(8%)」で構成されます。(売上構成比は2025年3月期実績)
アマノは、国内で初めてタイムレコーダーを開発した企業で、1931年の創業から「人と時間」、「人と環境」をテーマに事業を拡げてきました。戦後公布された「労働基準法」によりタイムレコーダーが企業の必需品となるなか、旧国鉄から大口受注を獲得したことをきっかけに急成長を遂げました。
その後も1960年代・1970年代にも同様の成功を収めています。1957年の「駐車場法」の制定を機に、国内初の駐車場発券機、そして全自動料金精算機といった駐車場システムを開発・発売したことで事業領域を急拡大させました。
2000年代にも、労働基準監督署の「始業就業時刻の確認記録徹底」指導の公布(2001年4月)、個人情報保護法の施行(2005年4月)と、政策による勤怠管理需要の高まりを追い風に売上を拡大させてきました。近年では働き方改革を背景に改正電子帳簿保存法対応等のニーズを掴みデジタルタイムスタンプが需要を享受しました。
注目ポイント
現在では、入退室管理システムをはじめ、人事労務管理システム、駐車場システム、また工場内輸送機や洗浄機などを取り扱っています。
特筆すべきは、複数の領域でトップシェアを獲得していることです。出入口にゲートが設置されているゲート式駐車場機器では国内約60%、タイムレコーダーと就業管理システムで40%、そして業務用フロアポリッシャーなどの清掃機器で30%、粉塵を処理する集塵機で35%と、5つの領域で国内トップシェアを獲得しています。
また、高シェアの獲得と維持に貢献しているものとして、「ワンストップ提供」の能力が挙げられます。2013年にシステムインテグレータ事業会社クレオを買収したことが大きな契機となったようで、買収によって同社は、就業から人事・給与・食堂・通信までのビジネスパッケージの販売が行えるようになりました。
このワンストップ提供は、同社の柱であるパーキングシステムにおいて受注獲得の武器となっています。
駐車場ビジネスは、駐車場そのもの(ハード)に対する需要に留まらず、ソフトや保守・メンテナンスとパーキングシステムに関わる全てに需要が発生します。同社では、機器の開発・製造・販売、駐車場設計、施工、管理運営等を一貫して行っています。駐車場機器の設置工事をはじめとして、駐車場の付帯工事全般を責任施工で行い、リニューアルや補修工事などすべてに対応しています。
これらをワンストップ提供できるということは、複数の需要の受け皿となることが出来ることを意味します。また決済手段の多様化やチケットレス化、ナビシステムとの連携、またテーマパークや商業ビルとの連携など、マーケットの広がりによる需要増も見込まれます。
そして駐車場を作った後も、管理・運営を請け負うことで、収益が発生します。メンテナンスは定期的に需要が発生しますし、運営受託は受託車室数が増えるほど収益が伸びるストック型のビジネスモデルとなっており、全体収益の安定化に寄与していると考えられます。メンテナンスは2024年度に15%成長を記録し、受託車室数は74000台増加(10.4%増)しました。パーキング事業は海外でも好調で、29%の売上成長を達成しています。
なお、同社では早くから海外展開をしてきました。国内での成功を基に、1964年にはニューヨークに現地法人を設立。これを皮切りにM&Aを駆使して海外展開を進め、現在では海外でも28の子会社を擁し、国内76、海外95拠点を誇る事業規模となっています。海外売上高比率は2000年に17%となり、2025年3月期には47%を占めるまでに成長しました。
このように政策を捉えた事業展開と、市場先行者となることで圧倒的シェアを獲得してきたトップポジションは、同社に「長期間にわたる成長」をもたらしています。
2007年3月期以降の売上高の推移を見ますと、858億円→2025年3月期には1754億円に倍増しています。この間、売上高がマイナス成長となったのは、リーマンショック後とコロナ禍のみでした。そして赤字はありません。過去10年間は平均5%で、そしてこの3年間においては働き方改革や自動化の進展が追い風となって、年間平均15%の成長記録しました。
【プロフィール】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。