*12:09JST CACHD Research Memo(9):人的資本の非財務価値向上への取り組みを推進
■ESG
CAC Holdings<4725>は、ステークホルダーとともに、高度IT人材による事業活動を通じて、持続可能な社会の実現と企業成長の両立を図るべく、2022年にマテリアリティの整理と優先順位付け、ゴール設定を実施した。「事業活動を通じた社会課題の解決」を最重要項目に据え、サステナビリティ経営を推進している。社会インフラ分野における課題解決型のサービス展開を通じ、非財務価値の向上を目指す取り組みを進めている。
1. IT技術による社会的課題の解決
同社は2025年1月、スマート養殖事業を担う子会社を設立し、水産業が抱える地域課題の解決に向けた取り組みを開始した。長崎県においては、2019年から地域課題と地方創生に取り組む中で、高齢化や飼料価格の高騰といった構造的な課題を抱える養殖業に着目した。AIやIoTを活用し、生け簀内の養殖魚の体重を魚に触れずに推定する技術の実証実験を行い、作業負担の軽減と資産価値の可視化を実現した。これらの技術は、漁業における経営管理の高度化や金融機関からの資金調達の仕組みにもつながるものであり、同社は産・官・学が連携する「ながさきBLUEエコノミー」プロジェクトにも参画している。ITを活用した社会課題解決の取り組みとして、持続可能な水産業の実現に向けた技術開発と実証を進めている。
2. 画像認識AIを活用した見守りシステム「まもあい(mamoAI)」により介護・医療従事者をサポート
同社は2023年12月、介護施設や医療機関での高齢者や患者の転倒・転落、離床の予防と再発防止を支援する見守りシステム「まもあい」のMVP(Minimum Viable Productの略であり、実用最小限の製品)版を提供開始した。同システムはAI技術を用いて人の骨格を捉え姿勢を判断することにより、転倒の未然防止を目指している。
従来のシステムは転倒後の検知となりがちであったが、同システムは姿勢に基づき危険を検知すると早期にスタッフのモバイル端末に通知する。数千枚の姿勢画像をAIに学習させることにより、誤検知を排除している。将来的にはベッド周辺だけでなく居室や病室全体を見守り、レポートの自動作成機能の追加も予定している。同システムにより介護職員や看護職員などの業務をサポートし、安心安全な介護・医療環境の実現を目指すとしており、テクノロジーによる社会課題の解決に向けた取り組みの1つとして評価されよう。
3. 2016年から継続する「ボッチャ支援」
ITを事業の柱とする同社は、本業を通じて社会が抱える課題を解決する典型的なCSV型企業グループである。同社はESG活動として、障がい者スポーツ「ボッチャ」の普及・支援活動を2016年から継続しており、この活動を通してグループ社員が社会とのつながりを持ち社会に貢献することを目指している。単なる資金的な支援だけではなく、社員自らが企画・実施することを重視した活動となっている。
「ボッチャ」は障がい者向けに考案され全世界に普及(1988年にパラリンピック正式競技に採用)しており、障がい者・健常者、年齢、国を問わず楽しめるスポーツで、戦略性も求められる。これらの特徴から、「ボッチャ」を新人研修や社員研修のカリキュラムに取り入れるだけでなく、社員の家族等にも「ボッチャ」に触れ合う機会を提供している。今では国内グループ社員の多くが「ボッチャ」経験者となっていることに加え、2024年4月時点で2人の選手を雇用している。また、スマートフォンを活用したボッチャツール「ボッチャメジャー(ボール間の距離を自動測定するAndroidアプリ)」をGoogle Playで無料提供するなど、IT企業ならではの支援を続けている。こうした結果が評価され、東京都から「令和6年度(2024/12/10リリース)東京都スポーツ推進企業」に9年連続で認定されている。また、2024年には、東京都スポーツ推進企業の中でも特に先進的な取組や波及効果のある取組を行っている企業として2回目の「東京都スポーツ推進モデル企業」の選定を受けている。
同社の「ボッチャ」への取り組みは、普及・支援の枠を超えグループ社員のコミュニケーションや社会貢献に対する意識向上に貢献している。それこそが、創業50年記念の取り組みに同社が「ボッチャ支援」を選び今も継続している理由であり、同社が「見えない資産」と呼ぶ非財務価値の向上に対する思いだと弊社は考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林拓馬)
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