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FiscoNews

【注目トピックス 日本株】ノイルイミューン Research Memo(6):がん治療薬ベンチャーとしての持続的成長を目指す

*15:36JST ノイルイミューン Research Memo(6):がん治療薬ベンチャーとしての持続的成長を目指す
■中長期の成長戦略

1. 事業の3つの方向性
ノイルイミューン・バイオテック<4893>は、「自社創薬事業」及び「共同パイプライン事業」の両輪事業と、新たな事業を創出する「次世代技術の研究開発」の3つの事業からなる。特に自社の研究開発としては、自社創薬事業と次世代技術に注力している。

(1) 自社創薬事業
創薬バイオベンチャー企業にとって、自前でがん治療薬を開発するには、開発コストが膨大で、開発リスクが高い。開発パイプラインのポートフォリオ戦略が重要で、同社は現在、NIB103(トリプルネガティブ乳がん、卵巣がんなど)を最重点・最優先に研究開発に取り組んでいる。また、新規開発品(NIB104、NIB105)もラインナップされ、新規品の探索も着々と準備中であり、開発パイプラインの質量の面での潤沢さと新規性(新陳代謝)を確保していると言える。自社創薬開発パイプラインでは、自社にて臨床試験を実施し、ライセンス契約のタイミングは戦略的に判断するものの、製造・販売以降は製薬企業や創薬バイオベンチャーとのパートナーシップを進めることを基本方針としている。

(2) 共同パイプライン事業
同社のPRIME技術は、製薬企業や創薬バイオベンチャーに技術供与され、相手先の開発パイプラインのマイルストンに沿って開発が進められる。そのため、同社の開発リソースが投入されることなく、自社創薬事業による収益と比べると少額ながらも安定したライセンス収入(契約一時金、開発マイルストン収入、ロイヤリティ収入)が得られる。端的に言えば、開発の進捗は相手側の開発力に依存するものの、開発パイプラインの進捗が順調に進めば、開発リスクを負わずライセンス収入の増加が期待できる。

自社創薬事業において、PRIME技術を応用した固形がん治療薬が早期に申請・承認されれば、PRIME技術のプレゼンスは一層高まり、共同パイプライン事業においても製薬企業や創薬バイオベンチャー企業によるPRIME技術の利用が促進されると思われる。その結果ライセンス収入が増え、その資金を自社創薬パイプラインの開発投資に充てられる。同社が創薬バイオベンチャー企業として持続的に成長するためには、「自社創薬事業」と「共同パイプライン事業」は不可欠な存在で、“クルマの両輪”と言える。

(3) 次世代技術の研究開発
1) 他家のCAR-T細胞へのPRIME技術の応用
同社の開発パイプラインは、いずれも「患者」自身の免疫細胞から製造する自家のPRIME CAR-T細胞であるが、健常者の免疫細胞から製造する他家(健常なドナー由来の細胞)のCAR-T細胞についても、PRIME技術の応用が可能である。

同社は、2020年5月にゲノム編集技術の1つであるCRISPR-Cas3技術を有するC4U(株)と、また2023年2月には、多能性幹細胞から免疫細胞を作製する技術を有するリバーセル(株)と、共同研究及び事業化に関する提携を行い、それぞれの技術を活用した他家CAR-T細胞の研究開発を進めている。

他家CAR-T細胞療法が実現すれば、健常なドナーから提供されたT細胞を用いて大量に製造したCAR-T製品を保管し、患者が必要な際に迅速に投与することが可能となる。PRIME技術は、自家(患者自身の細胞)・他家(健常なドナー由来の細胞)全般、がん治療の様々なモダリティに適用できる汎用性の高いがん免疫治療技術であると言える。

2) 製造(細胞培養)の自動化・短縮化
自家のCAR-T細胞治療においては、患者のT細胞を体外に取り出し、CAR遺伝子を導入してCAR-T細胞を作製・増殖させた後、再び患者の体内に戻すが、この細胞の製造には長い時間と高いコストがかかっている。

この点に関して、「製造の自動化」が重要な課題となっている。現在、多くの企業では培養士が手作業で製造を実施しているためヒューマンエラーの発生や作業者の間のバラツキ、さらに細菌混入などの汚染リスクに晒されている。完全ロボット化できれば、製造プロセスを24時間365日稼働することが可能となり、製造コストの大幅な削減と品質の均一化が図られる。同社は、2019年11月に澁谷工業<6340>とCAR-T細胞などの臨床用細胞製造システムの共同開発契約を締結し、非臨床用に加え、臨床用及び事業化を目指したCAR-T細胞の自動製造システムの開発を進めている。

また、「製造期間の短縮化」については、現状の10日〜2週間という期間を3〜4日まで短縮することを目標に、世界の主要な免疫細胞企業が研究開発に取り組んでいる。同社もPRIME CAR-T細胞を短い培養期間で製造できる技術の開発を進めている。

3) 次世代PRIME技術の取り組み
従来のCAR-T細胞療法は、自家であれ他家であれ、免疫細胞を体外に取り出し、遺伝子を組み換えて増殖させた後に患者の体内に戻すというスキームである。これに対し、in vivo CAR-T細胞療法は、体内に遺伝子を送達する技術と組み合わせ、患者の体内でCAR-T細胞の遺伝子組換・増殖を行う細胞療法である。

in vivo CAR-T細胞療法は、従来のCAR-T細胞治療の概念を覆す次世代技術となるが、現時点では研究段階にあり、我が国では臨床試験の実績はなく、世界的にも実施例は限定的である。

同社では、社内にin vivo CAR-T技術研究チームが設置され、他の免疫細胞企業に先んじて研究開発に取り組んでいる。そして、2025年2月には「東京大学との核酸送達用ポリマー化合物に関するオプション契約締結」がプレスリリースされた。東京大学の有する特定の遺伝子などの核酸送達のためのナノポリマー技術と同社のPRIME CAR-T技術を組み合わせ、CAR発現遺伝子などを包埋した当該ナノポリマーを用いて生体内に送達し、生体内でCAR-Tを作り出すin vivo CAR-Tの研究開発を推進している。

PRIME技術を主軸に、がん免疫療法を通じて「がんを克服できる時代」の到来に貢献

2. がん治療法に関する次世代技術開発ロードマップ
PRIME技術は高い拡張性を有した技術であり、プラットフォーム技術として多様なモダリティやがん治療法への展開(PRIME技術の搭載・併用)により、がん治療の新境地に挑んでいる。以下のような事業展開が進むことが期待される。

1) PRIME技術を活用したモダリティへの横展開
・TCR-T療法へのPRIME技術の搭載
・腫瘍溶解ウイルス(HSV、Vacciniaなど)にPRIME技術を搭載
2) PRIME技術と他がん免疫技術との併用
・PRIME CAR-T技術と免疫チェックポイント阻害剤(PD-1阻害)の併用
3) ゲノム編集を活用した他家CAR細胞への展開
・NK細胞やγδ型T細胞を利用したがん免疫細胞療法、TIL療法、iPS細胞を利用したがん免疫療法などへのPRIME技術の応用
・ゲノム編集を活用した各種CAR細胞への展開
4) 細胞医薬製造技術の研究開発
・培養期間の短縮化…製造コストの低減、がん治療効果の増強
・細胞培養の自動化…品質の均一化、製造コストの低減、製造キャパシティの向上
5) in vivo CAR-T誘導による治療法の開発
・PRIME CAR-T技術の体内での誘導技術の応用

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)

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