人口減少が著しい九州、北陸が苦境に
不良債権比率でワースト1位になったのがスルガ銀行(8.56%)だ。森岡氏が語る。
「2018年にシェアハウス運営会社の経営難をきっかけに発覚した1兆円の不適切融資問題が尾を引いています。金融庁が新規の投資用不動産向け融資を6か月停止するなど厳しい処分を下しており、経営再建は道半ばといったところです」
不良債権比率の高さについて同行に聞くと、「2018年に発覚した投資用不動産向け融資に関する問題に起因」(広報)と回答。一方で「不良債権の多くは不動産担保により保全が図られ、適切に貸倒引当金を計上することで財務健全性を確保」しているとした。
ワースト2位は長野銀行(6.42%)、3位は豊和銀行(6.17%)となった。
「九州や北陸など人口減少が著しい県を地盤とする地銀の不良債権比率が総じて高い傾向にあります」(森岡氏)
長野銀行は本誌取材に対し、「2026年1月1日に予定されている合併を前に(合併先である)八十二銀行への取引移行を進めており、それによる貸出金残高の減少等を背景にしたもの」(総合企画部)と説明。豊和銀行は「期限までの回答は難しい」(広報部)と取材を辞退した。
もちろん、この数字をもって経営状態のすべてを判断するのは早計だが、全97行中35行が“危険水域”と言われる「2%」を超えていることは見逃せない。金融ジャーナリストの浪川攻氏もこう言う。
「歯止めが利かない少子高齢化と人口減少、それに伴う事業者数の減少は、地方に行くほど顕著です。地銀は地元の経済基盤の衰退という逆風に常に晒されている。加えて、『預金金利の高さ』や『24時間365日取引可能な利便性の高さ』などを謳い、近年台頭してきたネット銀行などへ地銀の預金がシフトしている傾向も見逃せません」
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※週刊ポスト2025年8月15・22日号