*18:00JST 通信業界の主戦場は「非通信」へ。投資判断に求められる新たな視点
今回は人気の通信業界について、NTT<9432>、KDDI<9433>、ソフトバンク<9434>の3社を中心に、今後の投資判断に役立つ視点をお届けします。
通信の本業は成長鈍化。非通信領域へ主戦場シフト
まず押さえておきたいのは、通信業界の「携帯・スマホ市場」がもはや成長鈍化局面に入っているという事実です。日本の人口減少に加えて、政府の値下げ圧力や格安スマホの台頭により、通信単価(ARPU)は年々下落しています。
こうした背景から、主要各社は「非通信分野」への事業シフトを加速しています。たとえば、
・個人向け:総合生活プラットフォーム(決済、EC、ポイント経済圏など)
・法人向け:DX/AIソリューションサービス
といった2大領域が、今や通信会社の主戦場となっています。
決済プラットフォーム領域ではソフトバンクが先行、PayPayが圧倒的シェア
個人向けサービスでは、決済プラットフォームがカギとなります。MMD研究所の調査によれば、PayPayの利用率は46%と他を大きく引き離しています(d払い:16%、au PAY:11%)。この領域でソフトバンクは明確に優位に立っており、非通信分野における拡大戦略の成果が表れています。
加えて、各社の非通信事業の売上成長率(2018〜2024年CAGR)は年率7-11%と好調で、今後も「コード決済市場」や「ECサービス市場」が通信各社の成長をけん引すると見られます。
3社比較:最も魅力的なのはソフトバンク<9434>
中長期投資において重要な「キャピタルゲイン(資産成長)」と「インカムゲイン(配当収入)」の両面から、3社を比較すると次の通りです。
ソフトバンク<9434>
・時価総額成長率・配当利回りともにトップ
・非通信事業(PayPay、LINEヤフーなど)がけん引役
・ただし、配当の伸びが時価総額の成長に追いついておらず、将来的な配当利回りの低下には注意が必要
現在は他社に比べて最も投資妙味のある銘柄といえます。
NTT<9432>
・成長率に対してリスク(ボラティリティ)が高く、ハイリスク・ローリターン
・配当利回りも低めで、割安ではあるが投資対象としての魅力は乏しい
・ただし、次世代通信インフラ「IOWN」構想には注目。実現すれば、通信やクラウド、半導体、自動運転、メタバースなど多分野で覇権を取る可能性も
現時点では割安でも、将来の大化け要素を持つ「夢枠」のような存在です。
KDDI<9433>
・株価の変動は少なく、財務も堅実だが、成長率も配当も平凡
・目立った成長戦略やニュースも乏しく、投資家からの期待は後退傾向
・ローソン事業を三菱商事から引き継いだが、株価は反応せず
安定志向の投資家には向いていますが、リターンを狙う投資先としては今ひとつ魅力に欠けます。
NTTのIOWN構想:通信インフラの未来を変えるか?
NTTが現在注力しているIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想は、大容量・低遅延・省電力な通信インフラの次世代技術です。完成すれば以下の市場に大きなインパクトを与えると見られています。
・通信(5G/6G、光回線)
・クラウド/データセンター
・自動運転/スマートモビリティ
・医療、メタバース、スマートシティ、グリーンエネルギーなど
現時点では株価にこれらの将来性は織り込まれていないため、今後の成長性を見込んで早期に仕込むという選択肢もあり得ます。
まとめ:今注目すべきはソフトバンク、NTTは将来性に期待
通信業界はもはや「通信だけの業界」ではなく、決済・EC・DXといった非通信事業が主役となっています。その中で、ソフトバンクは現在の収益・配当ともに魅力的な投資先です。
一方で、NTTは未来に大きな可能性を秘めた「成長株候補」であり、今後のIOWN構想の進展次第では株価上昇のチャンスが広がるでしょう。
通信セクターに投資する際は、従来の「通信品質」や「携帯契約数」ではなく、非通信事業の成長性やインフラ戦略を軸に銘柄選定することが求められています。長期的な視点で賢く銘柄を選びたい投資家にとって、これからが通信業界の“真の勝負所”と言えるでしょう。
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