いまや一般学力試験よりも推薦入試が主流の時代が来ている
大学受験において、推薦入試に対する注目度が高まっている。指定校推薦や総合型選抜(旧AO入試)など、一般選抜以外の推薦入試での入学者は全体の半分になってきているが、『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』が話題の受験ジャーナリスト・杉浦由美子氏は「将来的にはすべての大学入試は推薦になる」という。その根拠はなんなのだろうか。杉浦氏がレポートする「すべての入試が推薦になる世界線」【前後編の前編】
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東北大学が「2050年までにすべてを総合型選抜に移行する」と公にコメントし話題となっている。つまり25年後だが、その頃には他の大学の入試もすべて総合型選抜をはじめとした推薦入試になっているはずだ。
実際、2025年の大学入学者のうち半分が推薦入試組で、私立大学に限れば6割が推薦入学組になってきている。首都圏の有名大学を見ても日本大学、東海大学、帝京大学では一般選抜率が3割程になっている。
さて、なぜ推薦入試はさらに拡大していくと考えられるのか。
「これからの時代、学力だけではなく他の能力も大切だ」「コミュニケーション能力が重要だから面接重視の総合型選抜が増えている」と推薦入試が拡大する理由を語る人たちがいるが、それはポジショントークに過ぎない。現実問題として、少子化のため一般選抜で選抜ができなくなっていくから、推薦入試が拡大していくのだ。
2023年の出生数は72.7万人。現在の18歳人口が109万人なので、それから25%ほど減るとどうなるか。今年の大学入学者が約60万人だから2042年ぐらいには40万人強になろう。2024年の段階で私立大学のうち59%が定員割れとなっている。今後この流れはさらに加速していくだろう。
そうなると、もう、一般選抜では選抜ができなくなるのだ。ゆえに推薦入試で選抜をせざるを得なくなるのだ。
基礎学力のある生徒が指定校推薦で、地元のボーダーフリーの優良私立大学へ進学
日本各地には、地元トップ私立大学があり、地元の企業へ人材を輩出している。こういった私立大学の多くは一般選抜の偏差値を見るとボーダーフリーだが、推薦で入ってくるのはそれなりの評定偏差値の学生たちなので決してボーダーフリーではない。
「地元の大学しか進学できない生徒の場合、国公立には手が届かないと考えると指定校推薦で地元のトップ私立大学へ進学をします。基礎学力があっても家庭の事情で県外の大学に進学できない生徒たちは多いですからね」(地方公立高校進路指導教諭)
この流れは、実は知名度の高い私立大学にも来ている。
その代表例が、日本大学、東海大学、帝京大学などである。現状、これらの大学は一般選抜で十分学力が高い学生が入ってくるし、志願者の数も多い。2025年度の入試で志願者が増えた大学2位が日本大学であり、前年比122%で1万6393人増えている。特に日本大学は「日東駒専」(日大、東洋、駒澤、専修)の一角で難易度もそれなりに高い。それなのに、一般選抜の割合は3割に過ぎない。これはなぜなのだろうか。