推薦枠拡大の裏に学力の高い生徒を確保したいという思惑
ある大手予備校の職員はいう。
「日本大学や東海大学、帝京大学はどれも知名度が高い人気大学ですが、規模が大きいため一般選抜の枠を増やすと、定員を満たすためには学力が一定水準に満たない受験生も合格させることになってしまうんです。それならば、一般選抜の枠を減らして、推薦入試で入学者を確保した方が学力の高い学生が入ってくるということなんだと思います。そのために付属校や系列校からの内部推薦や指定校推薦、もしくは総合型選抜で学生を確保したいという考えでしょう」
日本大学の法学部の2025年の新入生は1815人。これだけの大人数の半分を一般選抜にすると1000人近くを合格させることになり、そうなると学力が一定程度の水準に届かない学生まで入学させることになりかねない。それよりはある程度の数を推薦入学させた方が、学力の高い学生をとれるということになる。
内部進学も決して楽ではない。
日本大学の付属校から内部推薦で進学する場合、「日本大学付属高等学校等統一テスト」を受ける必要がある。各塾ではこのテストの対策講座を設けているほどだ。このテストを受けて、大学に入学してくる学生たちはきちんと基礎学力があるわけだ。
また一般選抜の割合が狭まることで、必然的に一般選抜の偏差値は高くなり、一般選抜で学力が高い学生を入学させることができよう。河合塾偏差値では、一般選抜の法学部法律学科(A個別第2期)は52.5と難易度を保っている。つまり、定員割れとはほど遠い人気大学も「学力が高い学生を入学させるためには、推薦入試を増やした方がいい」時代になってきている。
今回はなぜ今後、すべての大学入試が推薦になっていくかについて書いた。少子化が加速する中で、一般選抜では学力のある生徒を確保できなくなる。その将来を見越して、文部科学省は推薦入試を拡大しようとしていると推測できよう。
次回は、その推薦入試の内容がどうなっていくかについて言及していきたい。
■後編記事:《かつてのAO入試時代とは大違い?東北大学でも早稲田大学でも「総合型選抜の学生は成績がいい」と太鼓判、難関大で推薦入学組が一般選抜組よりも成績が良いカラクリ》に続く
杉浦由美子氏の著書『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(青春出版社)
【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/受験ジャーナリスト。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『大学受験 活動実績がゼロでいい 推薦入試の合格法』(青春出版社)が2025年4月に発売。『ハナソネ』(毎日新聞社)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)で連載をし、『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』で記事を書いている。受験の「本当のこと」を伝えるべくnote(https://note.com/sugiula/)のエントリーも日々更新中。