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FiscoNews

【注目トピックス 日本株】1stコーポ Research Memo(8):新建築技術の研究開発に注力し、新技術による差別化で受注拡大を目指す

*11:08JST 1stコーポ Research Memo(8):新建築技術の研究開発に注力し、新技術による差別化で受注拡大を目指す
■中期的な展望

1. 免震・耐震に優れた新たな建築技術の開発
ファーストコーポレーション<1430>は、中期的には建築技術に関する新たな手法を開発し、他社との差別化によって受注拡大につなげる方針である。具体的には、免震・耐震に優れた新建築技術の研究開発に注力している。現在の新耐震基準は1981年から施行されており、40年以上が経過した。国土交通省の調査では、2023年末には新耐震基準のマンションで築年数が40年超となるものが約34万戸に上ると推定されている。さらに、2038年末には、その約8倍の約260万戸まで膨らむという。一般的にマンションは築30~40年で建て替える傾向にあり、新耐震基準対応のマンションであっても、今後は建て替えのニーズが発生することは想像に難くない。そうしたなか、同社の免震・耐震に優れた新たな建築技術が差別化要因になる。同社によると外部企業との共同研究は一旦完了し、同研究成果に関連する特許も出願済み・審査中の状況である。また、近い将来、具体的な研究成果の発表も予定されており、今後の実用化に向けた取り組みが期待される。今後も引き続き研究開発に注力し、その進捗状況は適宜投資家に向けて開示する方針である。

全国的に人口が減少するなかにあっても、同社が主要事業エリアとしている首都圏1都3県では、人口の流入が続いている。東京都の人口ピークは2030年に1,426万人、世帯数のピークは2035年に768万世帯と予想されており、引き続き、首都圏における住宅需要は堅調に推移する見通しである。また、同社によると分譲マンションに対する購買意欲は今後も底堅く推移することが予想されるという。同社のこの地域でのシェアは3%程度であることから、なお市場開拓の余地は大きいと言えそうだ。

九州支店でも実績の積み上げが順調。実績をベースにさらなる事業拡大に注力

2. M&Aを念頭に置いた事業展開
建設業界における足元のマイナス要因の1つは慢性的な人手不足である。そうしたなかで同社は、新卒・第二新卒の採用に注力している。また、この業界は比較的離職率が高いため、給与体系の見直しや人材育成にリソースを投入し、施工人員と施工体制の拡充を図っている。2024年5月には管理本部管下の採用・人材開発部を採用・人材開発室に改組したうえで、社長直轄部門とした。また、施工人員を抱える企業との業務提携を行い、実際に現場に人員を投入するなど、積極的に対策を講じている。さらにM&Aも念頭においている。同社の営業エリアである首都圏での出物はなかなか見つからないものの、マーケットの情報を注視している。ただし当面は、リソースの範囲内で選別的に案件を受注していく考えである。

一方、将来の成長に向けた重要なポイントはエリアの拡大であり、注目すべきは九州支店である。同支店は、2018年4月に福岡県福岡市中央区に開設後、先行投資の状態が続いていたが、2025年5月期に福岡県福岡市博多区の事業用地2件の売却を成約した。当初は造注方式によりデベロッパーとの共同開発を予定していたが、適正な利益を確保できる見込みから、売り切りでの売却に切り替えた。アジアへの玄関口である福岡エリアは2038年まで人口増加が見込まれており、人員増強を進めることで、事業の拡大が期待されている。

さらに、同社は、大規模修繕事業や収益不動産事業など、周辺事業への展開による新たな収益源の確保を視野に入れている。大規模修繕事業については、M&Aによるリソースの確保を前提に、積極的に検討を進めている。収益不動産事業については、財務戦略の策定に加え、金利動向を注視しながら検討していく方針である。

中期経営計画の下、年商500億円の早期実現、さらに1,000億企業を目指す

3. 中期経営計画
2024年7月、同社は2027年5月期を最終年度とする3ヶ年の新中期経営計画「Innovation2024」を策定した。前中期経営計画「Innovation2023」の最終年度まではまだ時間があるものの、事業環境の変化や直近の受注見通し、事業用地成約の進捗状況と不動産市況等を踏まえたうえでローリング補正を行った。新中期経営計画「Innovation2024」においても基本的な方針に変わりはない。当面の目標である年商500億円企業を早期に達成したうえで、次のステージとして年商1,000億円企業への成長を目指す。数値目標の達成に向けて、引き続き業容の拡大と利益水準の向上に取り組み、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る。

この計画では、前中期経営計画を継承し、重点施策として以下を挙げた。
1) 資本収益性の向上
2) 市場評価の向上

資本収益性の向上に関しては、中核事業である建設事業の強化に引き続き注力しながら、成長投資としてM&A、研究開発投資、人的資本投資に資金を振り向ける。具体的には、事業用地開発体制の拡充により造注比率を引き上げ収益性を高めるほか、好立地案件では共同事業の積極的な推進により利益を積み上げていくことなどを戦略として掲げている。また、再開発事業を積極的に推進し、中長期的な収益基盤に育成する方針である。これらと併せて施工人員の採用強化や業務提携による施工体制の拡充、現場業務の負荷低減などにも取り組む。旺盛な需要を業績の拡大に結実させるべく、受注体制の拡充・強化を推進する。中長期的な業容拡大と収益性向上のために成長投資も積極化する。施工体制の拡充、周辺事業への進出による収益基盤の多様化を目的としてM&Aを積極的に模索していくほか、新たな建築技術の開発を目的とした研究開発活動や、社内研修・資格取得支援制度による人材育成に積極的に資金を振り向ける。

市場評価の向上については、既存事業のさらなる拡大と成長投資によって企業価値を向上させるほか、株主還元の強化やIR活動の拡充にも取り組む。具体的には、株主・投資家との積極的な対話を継続するほか、ホームページ、IRサイトの一層の充実を図る。また、株主還元に関しては、連結配当性向30%以上を最低ラインとして、安定した配当を継続する。さらに、自己株式の取得を機動的に行うことで株主還元を強化する。これらの各種施策によって資本収益性と市場評価を向上させ、PBRをさらに高める。

「Innovation2024」の数値目標としては、最終年度である2027年5月期に売上高40,000百万円、営業利益2,950百万円、経常利益2,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,940百万円、受注高20,000百万円を掲げている。また、資本収益性に関しては、2027年5月期にROEを20.0%以上(2025年5月期は18.3%)を目指している。

売上高については、2025年5月期において既に最終年度の目標を超過達成し、2026年5月期の業績予想も2027年5月期と同額の40,000百万円に上方修正したが、現時点で2027年5月期の計画値は据え置いた。2027年5月期の完成工事高の目標は20,300百万円であるが、2025年5月期末の受注残高は35,760百万円(前期末比3.8%増)と積み上がっているため、工期の長さや、工事進行基準で売上が計上されることを踏まえると、目標達成の確度は高いと見ている。一方、不動産売上高は不確実要素はあるものの、2025年5月期末時点の販売用不動産及び仕掛販売用不動産の在庫は合わせて11,039百万円(前期末比0.7%減)と高い水準を維持していることから、目標達成に向けた準備は順調に進んでいると言える。また、同社としても、株主価値の向上のために計画値を上回る業績を目指している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)

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