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【注目トピックス 日本株】レジル Research Memo(7):分散型エネルギープラットフォームを構築し、中長期的に2ケタ成長を目指す

*12:07JST レジル Research Memo(7):分散型エネルギープラットフォームを構築し、中長期的に2ケタ成長を目指す
■レジル<176A>の事業戦略

1. 事業戦略
全体の経営戦略としては、分散型エネルギープラットフォームの構築に向けて、既存3事業が相互に補完し合って付加価値を継続的に高め、経営資源の傾斜配分や事業ポートフォリオの最適化を実施するとともに、M&Aを含め他社との連携も検討している。そのためには既存3事業の成長力を最大化する必要があり、中長期的に2ケタの利益成長を目指すため、セグメント別の事業戦略を策定した。また、3事業をつなぐハブ機能も必要となることから、新たに脱炭素ソリューション事業本部を設置し、家庭・公営住宅・企業向けの脱炭素の仕組み化や電力の地産地消促進のような「公共」を軸に、既存事業の顧客ターゲット層を拡張していく考えである。

(1) 分散型エネルギー事業
分散型エネルギー事業の事業戦略では、レジリエンス※1ソリューションの磨き込みと営業活動におけるポジショニング戦略、顧客獲得戦略が重点戦略となる。レジリエンスソリューションでは、「マンション×分散型エネルギー設備×デジタル制御」によって、エネルギーの最適利用と脱炭素への貢献を図る。同社が受変電設備や蓄電池などのDER※2設備を設置することで、デベロッパーや賃貸オーナーは費用負担なしにマンションの価値を高め、再生可能エネルギーを活用したScope3への対応を進められる。居住者にとっても、一括購入によって電気料金の負担が減少し、災害などに対するレジリエンス強化と脱炭素による環境保全の両立が可能となるため、デベロッパーと居住者が、ともに経済的価値と環境的価値を同時に享受できるようになる。ポジショニング戦略では、既築マンションから新築・賃貸・公営マンションへと営業領域を拡大し、顧客獲得戦略では、新規商材のマンション防災サービスによって、新築・賃貸マンションはもちろんREIT案件にリーチするとともに、契約更新のタイミングで既築マンションの一括受電サービスのリプレイス獲得につなげる。

※1 レジリエンス(resilience):災害や危機、ストレスなど困難から立ち直る力。
※2 DER(Distributed Energy Resources):分散型エネルギーリソース。太陽光発電や蓄電池などエネルギーの利用者(需要家)が所有するエネルギー源のこと。

(2) グリーンエネルギー事業
グリーンエネルギー事業では、再生可能エネルギー比率の向上と調達時のリスクヘッジを進める計画である。再生可能エネルギー比率については、2024年6月期以降の契約についてはすべて実質再エネで電力を提供する方針を打ち出しており、2025年6月期には、非化石電源の供給割合100%を達成(契約数ベース)している。引き続き調達方法の改善や市場連動プランの導入、CS(顧客満足度)向上に努めることで継続率を改善し、事業全体の収益安定化を図る。特に調達時のリスクヘッジとしては、昼夜の需要をバランスすることで1日を通して一定の電力需要(ベース電源)を確保するほか、最大1.5倍になる季節性変動による卸売価格差や、原発や太陽光発電の稼働状況の違いによる東高西低の価格差を使った電力先物取引を行う方針である。

(3) エネルギーDX事業
エネルギーDX事業では、顧客ターゲット層と提供業務の拡大を並行して進める計画である。顧客ターゲット層の拡大では、大手新電力向けにカスタマイズプランを、自治体参画や企業内新電力に対しては電力管理のフルアウトソースプランを提供するなど業務を拡大し、客単価の上昇と導入社数の拡大を進める。大手新電力案件はそれだけで収益へのインパクトが大きくなるが、自治体の新電力など小規模の案件も数多く集めることで収益拡大を図る。また、自己託送の規制によりオフサイトPPA※の運用ニーズが高まるなか、ノウハウを持たない新電力へのアプローチを強化する。提供業務の拡大については、サービス開始から継続年数が経つほど1企業への提供サービス数が増加する傾向にあるため、メニューを広げる方針である。

※ PPA(Power Purchase Agreement):電力購入契約。企業や自治体、自宅など電力需要家が所有する建物の屋根や遊休地をPPA事業者に貸し、そこに設置された太陽光発電設備による再生可能エネルギーを需要家が調達するシステム。オフサイトPPAとは、電力需要家から離れた場所に太陽光発電所を設置するPPAモデルの1つ。

成長戦略は順調に進捗、TOBでさらなる成長に弾みも

2. 成長戦略の進捗
成長戦略の進捗状況としては、分散型エネルギー事業については、NTTアノードエナジーから一括受電事業を譲受したことで年間導入戸数は過去最高を更新したほか、AIを活用した一括受電マンション併設型蓄電池の統合制御や、EVなどを活用したマンションでの蓄電実証プロジェクトを開始した。グリーンエネルギー事業では、供給中契約の全件に非化石電源の供給100%を達成したほか、REITや大手企業のサプライチェーンへの再エネ供給によるScope2、3の脱炭素支援を推進した。エネルギーDX事業では、自治体参画新電力向け標準化パッケージを開発して新たに4社を獲得したほか、既存ノウハウを応用して付加価値向上型BPOサービスを大手地域電力に提供開始した。

なお、ベインキャピタルのTOBが成立した場合、ベインキャピタルの資金とハンズオンによる経営支援が期待できるうえ、非公開化で思い切った投資も可能となるため、こうした成長戦略に若干の修正が加わる可能性がある。例えば、現在注力している短期的に収益を確保しやすいリプレイスから、リードタイムが長い代わりに市場規模や収益性の点でメリットのある新築防災への転換や、PMI(買収後の統合プロセス)や先行費用などにより躊躇しがちな大きな投資の実行も可能となる。ベインキャピタルの関係する様々な企業との連携や、こうした戦略を達成するための組織強化や人員拡充のノウハウにも期待できるため、成長が加速する可能性も高まる。分散型プラットフォームが当初の想定より大きいものとなり、企業価値が一層の向上を見せた際には再上場も期待できるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)

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