公共投資よりも減税が理にかなっている理由
野村総合研究所の木内登英氏は、自身のコラム(『各党が掲げる経済対策の効果:消費税率2%引き下げでGDPは0.4%押し上げられる計算だが。。。』2024年10月22日)で以下のように試算している。
〈5兆円規模の経済対策を実施した場合、公共投資であれば、1年間の実質GDPを0.92%押し上げると試算される。他方、一時的な個人向け給付金の場合には、同じ5兆円規模であっても、1年間の実質GDP押し上げ効果は0.21%と公共投資の4分の1程度にとどまる。
他方、減税の場合には、法人税率引き下げ、消費税率引き下げ、所得税率引き下げの順番に景気浮揚効果は高く、それぞれ1年間の実質GDPを0.48%、0.43%、0.25%押し上げると試算される。〉
数字だけ見ると、公共投資(0.92%)が最も高い。大きな政府を望む人々はこれを根拠に「公共事業を増やせ」と叫ぶ。だが、ここには落とし穴がある。政府が無理やり作った仕事は長続きしない。それどころか、政府が民間の資金や人材を奪う「クラウディング・アウト(押し出し効果)」を引き起こし、長期的には成長を阻害してしまうのだ。
対して減税(0.43%)は、中長期的な経済成長を促す。何を買うか、何に投資するか。数千万の国民と企業が、それぞれの知恵で最適なお金の使い方をする。現金給付(0.21%)の倍以上の効果を持ち、公共投資のような副作用もない。最も理にかなった策だ。
「財源」は借金か、増税か、歳出削減か
しかし、ここで警告しなければならない。「財源」をどうするか、という問題だ。
もし、減税の穴埋めを国債発行、つまり「借金」で賄えばどうなるか。日本の借金が増えれば、円の価値は下がる。円安が進めば、輸入する食料やエネルギーの価格は跳ね上がる。せっかく消費税をゼロにしても、商品の本体価格が上がってしまえば、減税の恩恵など一瞬で吹き飛んでしまう。
また、自民党幹部の一部からは、減税の代わりに別の税金を上げる「増税」をほのめかす声も聞こえる。だが、減税して増税するのでは、アクセルとブレーキを同時に踏むようなものだ。経済効果など出るはずがない。
必要なのは、徹底した「歳出削減」だ。減税で国民に5兆円を返すなら、政府は自分たちの使うお金を5兆円減らさなければならない。無駄な公共事業、膨れ上がった補助金、非効率な組織。政府が抱え込んだ贅肉を削ぎ落とし、身の丈に合ったサイズになること。これなしに、真の豊かさは訪れない。