*14:38JST 日本板硝子:コスト削減と価格改善が進展し黒字転換見込み、潜在需要も高く再評価余地あり
日本板硝子<5202>は、建築用、自動車用及び高機能ガラスの製造・販売を展開するガラスメーカーである。売上構成比は自動車用が5割、建築用が4.5割、高機能ガラスが0.5割であり、自動車向けを主力とする事業ポートフォリオを持つ。また、海外売上比率が約8割と高く、欧州を中心にグローバル市場で事業を展開している点も特徴である。
同社の競争優位性は、独自技術を基盤とした高付加価値製品の開発力にある。建築用ガラスでは、オンラインコーティング技術により高耐久かつ高機能な製品を提供している。特に環境意識の高い欧州市場では、断熱性能向上やカーボンニュートラル対応製品への需要拡大が見込まれており、リノベーション需要も含めて中長期的な成長余地がある。自動車用分野では、APBL(Advanced Press Bending Lamination)技術を活用し、複雑形状や大型フロントガラスを高精度に成形することが可能である。これにより、ヘッドアップディスプレイ(HUD)対応製品など高付加価値領域で優位性を確保している。高機能ガラス分野では、光通信や医療分野等に用いられるセルフォックレンズにおいて最大のグローバルシェアを有し、ニッチ市場で高い収益基盤を構築している。
2025年3月期は、売上高840,401百万円(前期比0.9%増)、営業利益16,491百万円(同54.0%減)、親会社の所有者に帰属する当期損失13,831百万円(前期は10,633百万円の黒字)であった。売上高は、自動車用及び高機能ガラス事業の需要改善に加え、円安による為替影響が寄与し増収となった。一方、利益面では、欧州経済の減速を背景とした建築用・自動車用ガラスの販売数量減少及び販売価格の低下、さらにインフレに伴う人件費・エネルギーコストなどの増加が影響し、最終赤字となった。
2026年3月期第3四半期累計は、売上高640,565百万円(前年同期比1.7%増)、営業利益18,511百万円(同71.3%増)、親会社の所有者に帰属する四半期損失5,134百万円(前年同期は10,079百万円の赤字)であった。売上高は欧米の自動車用ガラス事業での価格改善が寄与し増収となった。利益面では、欧州の建築用ガラス事業での生産停止による需給改善を背景とした販売価格の上昇に加え、前年度に実施したコスト削減施策が顕在化し、営業利益は大幅増益となった。
2026年3月期通期は、売上高850,000百万円(前期比1.1%増)、営業利益31,000百万円(同88.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益2,000百万円(前期は13,831百万円の赤字)を予想している。欧州市場の事業環境は厳しいが、建築用ガラス事業における生産調整による需給の改善に加え、太陽電池パネル用ガラスの堅調な需要継続により増収を見込む。利益面では、建築用ガラス事業及び自動車用ガラス事業における生産体制見直しによる固定費削減効果や販売価格改善の進展が寄与する見込みである。、さらに、検討中の繰延税金資産の見直しにより税金費用が減少する可能性もあり、黒字回復を見込んでいる。
6ヶ年の中期経営計画「2030 Vision : Shift the Phase」では、中間地点の2027年3月期に営業利益640億円、営業利益率7%、自己資本比率15%の目標を掲げる。主要戦略は、脱炭素化(Decarbonization)と新製品開発(Business Development)を軸としたポートフォリオ変革である。マレーシア拠点を活用した太陽電池パネル用ガラスの拡販、ADAS(先進運転支援システム)やEV普及に対応した高機能フロントガラスや調光ルーフガラスへの資源集中を進めている。加えて、DXを活用したオペレーション効率化や、米国における太陽電池パネル用ガラス生産ラインの稼働など、収益体質改善に向けた具体施策を着実に実行している。
株主還元については、安定的な配当継続を基本方針とする一方、足元では財務体質の改善を最優先課題としている。2025年3月期及び2026年3月期は無配を予定している。2026年3月期第3四半期末の自己資本比率は11.6%と前期末比で1.1ポイント改善したが、配当再開にはさらなる財務基盤の強化が必要とみられる。現状のPBR及び株価水準は低位にとどまるものの、欧州事業黒字化による利益水準の改善と潜在需要に基づくさらなる成長余地を踏まえれば、中長期的な業績回復とともに評価見直しの余地はあるといえよう。
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