いつからか投資の世界では、1億円以上を稼ぎ出した個人投資家のことを「億り人」と呼ぶようになった。彼らは、いかにして資産を築き上げているのか? まつのすけさん(ハンドルネーム。30代・投資歴12年・総資産1億円)が、自身の投資遍歴を振り返る。
クレカの特典で食事を楽しむことも多いまつのすけさん
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2000年代中盤に保険会社に入社し、周りでも投資をやっている人が多かったので株を始めました。当初は40万円ぐらいからでしたが、相場がよかったので、適当に業績がよさそうな銘柄を買って持っているだけで上がり、200万円くらいまで殖やすことができました。
ただ、ライブドア・ショックで初めて暴落を経験しました。
このままではダメだと思い、バフェットやロジャーズ、グレアム、オニール、リバモアなどの著名投資家の本を読んで勉強しました。特に、オニールが提唱していた「新高値をつけた銘柄を買って、さらに高値で売る」という投資法はすごく新鮮でした。
私も順張りを基本として、チャートが右肩上がりで業績がいい銘柄を買って、利が乗ったら伸ばしていく一方で、10%下落したら損切りするという手法で投資しました。これだと、損小利大になりやすいんです。
また、「期待値が高いか」を過去データで分析するようにもしました。例えば、「ROE(株主資本利益率)は高いほうがいい」といわれますが、必ずしも株価が上昇するかというとそうではないですよね。
優待銘柄は、権利確定の2~3か月前に買うと過去10年で毎年上がっているものもあることがわかった。これはいわゆる「イベント投資」ですが、過去のデータから明確な傾向があるかどうかを調べてから、ポジションを取るようにしたんです。
この投資手法がうまくいって、2012年には約2000万円まで殖やすことができました。
その後もバリュー投資をしたり、東証2部からの昇格狙いでチムニーや三重交通グループHD、第一交通産業を買ったり、介護はどう考えても伸びるだろうなと思ってチャーム・ケアを購入するなどして順当に利益を積み上げ、2016年に1億円を突破。
中でもライザップグループは10倍株(テンバガー)になりました。
一方で、大塚HDが日経平均に組み入れられることになり、上昇を期待して買ったもののダダ下がりで、過去最大級の200万円の損切りも経験しています。
今も会社員ですが、毎日ヤフーファイナンスの年初来高値更新銘柄と適時開示情報をすべてチェックしています。ずっと横ばいだったバリュー系の地味な銘柄がすごくいい決算を出したときは、上昇の初動に乗るようにしています。1~2か月ほどは上がり続けることが多いんです。
最初の数%は取れないけど、初動で買えば、発表後でも十分間に合いますから。継続して開示情報を見ていると、「こんな材料が出たらこうなりやすい」という傾向を掴むことができるようになります。
私の投資スタイルだと大儲けの機会こそ少ないですが、10%で損切りするので大負けすることも少ない。いつか再びリーマン・ショックのような大暴落が来るかもしれません。
そこで大負けしないで乗り切れるよう、日々努力していきたいと思います。
※マネーポスト2017年夏号