田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国でユニコーン企業のIPO加速、自由主義諸国との違い

中国のユニコーン企業が異例の速さで上場審査を通過(写真:アフロ)

 中国証券監督管理委員会(証監会)は異例の早さで鴻海精密工業の主要企業の一つでアップルのiPhoneの組み立てなどを行う富士康工業互聯網のA株上場審査を通過させた。2月1日、会社の概況、財務諸表、募集要項を含む上場のために必要なすべての資料を提出、9日にはそれらの全文と当局によるフィードバックを同時に公開、22日にはそれらを修正した書類を新たに公開、3月8日には上場審査を通過した。3月末にはIPO(新規上場)にこぎつけることになるだろう。

 1年かけてもこれらの4段階の作業を完成させることができない企業がある中、同社はわずか36日で通過、この内7日間は春節休暇があったことを考えると、実際の作業期間はもっと短かったことになる。まさに、“異例の早さ”である。

 同社は世界最大の電子部品のOEM、ODMメーカーで、27万人の雇用を抱えている。2017年12月期の売上高は3545億元、純利益は159億元、30.0%増収、10.5%増益であった。まさに、ユニコーン企業(企業価値の高い非上場企業)の典型例と言えよう。

 ただし、同社には仕入で全体の7.3%(2017年12月期、以下同様)、主要営業収入で12.3%の関連取引がある。いずれの比率も過去3年間下がり続けてはいるが、依然として気になる高さである。関連会社間で、仕入価格、販売価格が決定される状況では利益操作が容易である。

 また、ブラジルで2社のグループ内企業が、同社と同じ分野の業務を行っている。今のところブラジル内での業務に留まっているが今後、同じグループ内で仕事の取り合いになる可能性がないとは言い切れない。

 さらに、資金使途として、工業用インターネットプラットフォーム、クラウド関連のプラットフォーム、通信ネットワーク、5G(第5世代移動通信システム)・IoT(モノのインターネット)関連、知的生産新技術の研究開発、知的生産システムのレベルアップ、知的生産システムの生産能力拡大などに充てるとしている。こうした投資が、本当に上場会社のためだけために使われるのかという点が気になる。

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