投資

毎月分配ファンド 下落で利回り上昇も元本マイナス懸念

日本株が大幅に下落した2016年1月、投資信託市場にはあ6000億円もの資金流入があった。投資信託の投資信託の「積み立て投資」が、NISA(少額投資非課税制度)口座経由も含め、増えているという。だが、注意すべき状況も出てきている。楽天証券経済研究所ファンドアナリストの篠田尚子氏が解説する。

楽天証券経済研究所・ファンドアナリストの篠田尚子氏

楽天証券経済研究所・ファンドアナリストの篠田尚子氏

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最近の投資信託を取り巻く環境を見渡すと、足元では心配な状況も生じている。世界的な株安、ブラジル・レアルを筆頭とした高金利通貨安などの影響で、毎月分配型ファンドの価格下落が厳しさを増している。分配金の引き下げやファンドの解約が出る一方で、基準価額が値下がりしたものを買う、株式投資でいう「ナンピン買い」がみられるのだ。

基準価額が下落した結果、配当金を基準価額で割った、見かけ上の利回りがアップしているためだが、当然、配当金自体が増えているわけではない。あくまで、基準価額の下落によって利回りが上昇しているにすぎない。今後、配当金の引き下げが行なわれれば利回りはダウンするし、基準価額がさらに下落すれば、投資元本がマイナスとなる。

また、ナンピン買いの中には、基準価額の値上がり期待も少なくない。下げがきつかったため、たしかに値ごろ感は出ている。しかし、その期待が実現するのは難しいと言わざるを得ない。

分配金の高い毎月分配型ファンドには、高金利通貨を組み込んだものが多く、そのうちの多くが「カバードコール戦略」という、通貨の先物を売買するオプション取引を利用している。カバードコール戦略を使うと、プレミアムという収益が得られるためだ。高分配ファンドは、投資対象である株式や債券、リート(不動産投資信託)などの収益に、このプレミアムを上乗せすることで高い分配金を維持している。

その反面、カバードコール戦略は、仮に基準価額が上昇する局面を迎えても、大きな値上がりがしにくい仕組みになっている。高い分配金を出しているファンドほど、基準価額の回復には時間がかかる。

もし、ブラジル・レアルの反発を期待して投資をするのであれば、ブラジルの株式やレアル建ての債券を投資対象とする、シンプルな仕組みのファンドを選ぶべき。その方が、反発局面でリターンが得やすい。毎月分配型ファンドの深追いは、リターンは望みにくく、リスクが高いのである。

※マネーポスト2016年春号

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