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抜かりなく生前贈与をしたつもりでも…相続時に待っていた落とし穴

焦って生前贈与して大損するケースも…(イメージ)

焦って生前贈与して大損するケースも…(イメージ)

 今後、大きく変わりそうなのが相続のルールだ。子や孫1人につき、年間110万円までの贈与が非課税とされる暦年贈与は、複数人に対して長期間行なえば多額の資産を無税で移転できるため、相続税対策として広く使われている。今回の「2022年度税制改正大綱」では見送られたが、この暦年贈与を廃止する議論が進んでおり、今後数年内に実施される公算が高いと見られている。そうなれば、相続税対策に多大な影響を及ぼし、“相続増税”となる。

 ルールが変更される前の限られた期間に、生前贈与を済ませておこうという人も多いだろう。しかし、慌てて贈与を行なうと、思いもよらぬ失敗を招くことがある。

 不動産の贈与でも失敗するケースがあるという。相続・贈与に詳しい山本宏税理士事務所所長の山本宏氏が語る(以下同)。

「知人から『不動産を生前贈与すれば節税になる』と聞いて、評価額3000万円の不動産を子供に贈与したところ、名義変更のための登録免許税と不動産取得税で約150万円かかったという人がいます。実は、相続ならこれら2つの税負担は12分の1で済みます。

 別のケースでは、将来の相続時に子供同士が揉めないようにと同居の長男に自宅を生前贈与して大損した人もいました。相続まで待てば、『小規模宅地等の特例』が適用されて自宅の評価額を8割減にできたからです。この特例は生前贈与には適用されず、相続でしか受けられません。

 不動産の贈与と相続では贈与のほうがより税金が多くかかるので、これらの失敗をしないために、不動産は相続で引き継ぐほうが節税になることを知っておいてください」

 そうした知識を得たうえで抜かりなく生前贈与を行なったつもりが、相続時に思わぬ落とし穴が待っていることもある。

「贈与のつもりが、相続時に認められなかったケースは実際にあります。財産から3000万円を減らせば相続税がかからなくなると考え、3人の子供に毎年、非課税枠内の100万円ずつを10年間にわたり銀行振り込みで渡していた男性は、死後の税務調査で目論見が外れました。子供に渡していたお金が『名義預金』とみなされ、非課税で贈与したはずの3000万円は遺産として相続税の対象になったのです」

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