*14:08JST イージェイHD Research Memo(8):2028年5月期に売上高500億円を目指す中期経営計画を発表(2)
■E・Jホールディングス<2153>の今後の見通し
(2) 基本方針と基本戦略
同社は中期経営計画の達成に向けて、以下の4つの基本方針と基本戦略を推進する。
a) 基幹事業の拡充と新領域の開拓
中長期的な成長戦略を推進すべく、基幹事業を拡充するとともに新事業・新市場の開拓に注力する方針だ。基幹事業では、コア・コンピタンス(環境、防災・保全、行政支援)のさらなる強化を目指し、重点6分野の事業展開を積極的に推進する。具体的には、重点6分野合計の受注高を2025年5月期の257億円から2028年5月期は300億円に拡大し、全体に占める構成比も57.5%から60.0%に引き上げる。
環境・エネルギー分野では、カーボンニュートラルの実現に向けたグリーンインフラの推進プロジェクト等への参画を積極的に推進する。自然災害・リスク軽減分野では2024年度から5年間を対象期間とする20兆円規模と想定される「第一次国土強靭化実施中期計画」が2025年6月に閣議決定されており、多発する集中豪雨や地震対策として斜面防災や地質リスク関連業務の拡大が見込まれ、TSRとのシナジー創出が期待される。都市・地域再生分野ではスマートアイランドやコンパクトシティ構想への参画や都市防災・復興支援関連業務等の受注拡大を目指す。インフラメンテナンス分野では、AIやドローンなど先端技術を活用して橋梁・トンネル等のメンテナンス技術の高度化並びに生産性向上に取り組むほか、対象構造物の拡大(上下水道インフラ等)に取り組む。また、高速道路についても点検・調査技術の高度化により新たに今後15年間で1兆円の大規模更新事業が必要になるとの計画がNEXCOから2024年1月に発表されており、同事業での受注拡大を目指す。公共マネジメント分野では、公共インフラを対象としたPFI事業※や自治体との連携によるインフラ包括管理業務の受注拡大に取り組む。デジタル・インフラソリューション分野では、BIM/CIMによる高品質化、高度活用(AR/VR、地すべりCIM等)を推進するほか、計測・点検ロボットの開発により新たなソリューションを提供し、受注の拡大や生産性向上につなげる。
※ PFI(Private Finance Initiative)とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法。
新事業については、地方創生やGXなどをキーワードとして、次世代モビリティ研究やAIデマンド交通事業など官民連携事業に参画するほか、防災・減災、環境保全、地域課題解決等に資する新たなソリューション開発に向け異業種(保険、銀行、エネルギー、モビリティ等)との協業や自治体との技術連携協定を推進する。新市場については民間や個人向け市場の開拓を進める方針で、具体例として民間企業向け建築プロジェクトや生物多様性に関連したプロジェクトへの展開、BIM/CIM技術を用いたソリューションの施工業者や同業他社向けの展開、IT/AI企業との連携による各種アプリ・ツールの開発販売、自律型無人潜水機(AUV)の活用による洋上風力発電施設点検市場の開拓などに取り組む方針だ。IT/AI企業との連携に関する新たな取り組みとして、2025年3月に英国のAI開発企業であるMind Foundry Ltd.(以下、MF)との戦略的業務提携を発表した。今後、MFの画像マッチングAI技術をもとに、橋梁や道路などの最新点検画像と過去の点検調書から損傷個所をマッチングして検出する社内向け損傷判定支援システムを共同開発していく予定となっている。これら新市場及び新事業に関する受注高については、2025年5月期の12,611百万円(TSRの民間向け受注高含む)から2028年5月期は15,000百万円以上を目指す。
b) 海外ビジネス本格化への挑戦
海外売上高は、「地域×分野を活かす得意分野の拡大」「得意地域における拠点現地化の推進」「グループ企業とのパートナーシップ強化」の3つの戦略を推進することで、2025年5月期の10億円から2028年5月期は15億円を目指す。「地域×分野を活かす得意分野の拡大」については、これまでの実績で培った経験やノウハウを生かして、アジア地域における環境・防災分野、東南アジア地域における廃棄物分野、アフリカ地域における道路・橋梁、給水インフラ分野などのプロジェクトに関する受注拡大に取り組む。
「得意地域における拠点現地化の推進」については、東アフリカ、中央アジアでの営業拠点の設置により、案件の現地化や政府との関係強化を図るとともに、生産の現地化などにも取り組んむ。また、「グループ企業とのパートナーシップ強化」については、タイ及び東南アジアにおけるDynamic社との協働による事業拡大、並びにタイ子会社を起点とした日系企業案件の獲得やTSRとの協働による事業拡大を目指す。
c) バリューチェーンの強化
バリューチェーンを進化させ、競争力・共創力・総合力の強化を図ることで中長期的な成長基盤を構築する。プロダクトイノベーション(製品・技術の変革)やプロセスイノベーション(DX推進による業務プロセスの変革)に取り組むことで競争力の向上を図り、共創イノベーション(グループ内外での共創)に取り組むことで共創力を深化・進化させ、競争力や総合力の強化を図る。
d) サステナビリティ経営の推進
環境負荷軽減(E)や社会的責任・人的資本への取り組み(S)、ガバナンスの強化(G)に取り組みながら持続可能な社会の実現に貢献するとともに、資本コストや株価を意識した経営を実践することで、ROE10%以上とPBR1倍超の早期実現を目指す。
(3) キャッシュアロケーションの基本方針
今後3年間のキャッシュアロケーションに関して、キャッシュアウトとしては成長投資に65億円+α、株主還元として38億円以上を基本方針として考えている。成長投資の内訳は、DX投資で9億円、研究開発投資で6億円、人的資本投資で20億円(人材採用・育成費、職場環境改善費用等)、M&A投資枠として30億円+αとなる。M&A資金は手元キャッシュを基本に活用し、状況に応じて有利子負債の活用も検討していく方針だ。対象としては建設コンサルタント事業で同社のシェアが低いエリア(北海道・東北、北陸、九州)やリソースが不足している業務内容を展開している企業となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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