閉じる ×
閉じるボタン
有料会員限定機能の「クリップ」で
お気に入りの記事を保存できます。
クリップした記事は「マイページ」に
一覧で表示されます。
マネーポストWEBプレミアムに
ご登録済みの方はこちら
小学館IDをお持ちでない方はこちら
FiscoNews

【注目トピックス 日本株】リニカル:日本発のグローバルCRO、今期黒字転換見通しかつ配当利回り4%超え

*11:11JST リニカル:日本発のグローバルCRO、今期黒字転換見通しかつ配当利回り4%超え
リニカル<2183>は臨床試験を受託するCRO専業として、国内外の製薬会社やバイオベンチャーを顧客に幅広いサービスを展開している。臨床開発に特化し、創薬段階から新薬開発、承認後まで一気通貫のサービス提供。がん、中枢神経、免疫などの重点領域に強みを持ち、欧米・アジアに拠点を構えグローバルネットワークを活かした共同治験の実行力を高めてきた。韓国、欧州、米国での海外M&Aを経て、海外事業を中心に成長してきたが、約20か国・地域で従業員を雇用しており、提携パートナーを含めると30か国程度でサービス提供を行っている。創業以来「最大ではなく最強のCRO」を掲げ、難易度の高い治験においてもスピーディーかつ高品質なデータ提供を実現してきた点が差別化要因である。米Global Health&Pharma (GHP) Magazineから国際的なCROサービスプロバイダーとして表彰され、米国でBest CROとして選出。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格ISO/IEC27001認証をグループ全拠点で取得している。2025年3月期の地域別売上高構成比は、日本33%、米国43%、欧州19%、アジア5%となっており、海外比率67%となる。

競合比較の観点では、国内CROは近年MBOによる非上場化が進み、グローバル展開を自前で手掛ける上場企業は同社のみとなっている。同社は難易度の高い治験を高品質・短期間で遂行できるパフォーマンスを武器にリピート受注を重ねてきた点で、他社に比して優位性を持つ。一方で、米国の大手CROと比較すると規模は小さいが、同社はクライアントの要望に合わせたサービスに加えて、早期・小規模試験の企画立案から後期試験・承認申請までを提案型でフルサポートし、顧客に寄り添ったパートナーとして医療に貢献している。

2026年3月期第1四半期の業績は、売上高2,626百万円(前年同期比10.3%減)、営業損失104百万円(前年同期は営業損失66百万円)と減収赤字幅拡大の結果となった。地域別には欧州と台湾が新規案件や契約変更で増収増益となった一方、米国・日本・韓国・中国が減収となった。米国は契約変更による上積みがあったものの前年同期の反動減と外注費増で減益、日本は大型案件中止後の穴埋めが進んだものの赤字継続、韓国は医療ストの影響と案件中断で大幅減収、アジアの一部で新規獲得が進んだ台湾と中国は黒字化に転じた。足元の受注残高は124億円(前期末比6.2%増)に拡大し、とりわけ米国とアジアが牽引した点は注目される。今期計画では、売上高11,200百万円(前期比7.3%増)、営業損益300百万円の黒字を見込んでいる。米国の成長及び欧州・日本・アジアの回復が寄与する想定である。

市場環境を踏まえると、日本国内は「ドラッグ・ロス」が深刻化しており治験件数の伸び悩みが続く一方、欧米ではバイオベンチャーを中心とした開発意欲が根強い。特に米国・欧州を舞台にした大型の国際共同治験の受注が進んでおり、これが今後の業績回復のドライバーになるとみられる。米国と欧州は共同治験で進む案件が多く、積み上げは来期以降本格寄与する可能性があるようだ。また、台湾では営業体制強化が功を奏し、北米やアジア向けの案件獲得が拡大していることもポジティブ要因である。韓国は医療ストライキの影響は残るものの、データマネジメント・統計解析業務を中心に新規案件受注を獲得している。

今後は引き続き、さらなる海外事業拡大に向け、高品質なサービス提供及び財務基盤を強化していく。具体的には、日本500人、アジア400人、欧州400人、米国400人、合計1,500人を超える体制の構築しつつ、各極で成長投資(M&Aを含む)を行いつつ黒字を維持し、利益率を向上させる。また、世界60ヵ国程度の国へ進出して、サービスを拡大しながら収益性を向上させるために組織体制を変革及び強化するようだ。営業面では、欧米の新興バイオ医薬品企業を重点ターゲットとしつつ、大手製薬企業や日系製薬企業など顧客ごとに異なるニーズに合致する営業戦略を充実させる。そのほか、治験業務におけるAIの活用に向け、システムの導入検討を図るとともにテクノロジーと臨床開発の双方に精通した人材を育成していく方針も示している。

株主還元では、今期配当は1株当たり16円の維持を予定する。海外事業拡充への成長投資の原資を確保するため、前出の戦略による増収と高稼働率の維持とコスト管理を徹底し、一株当たり利益の持続的成長を確保していく。同時に当座比率、自己資本比率を高め、機動的な資金調達を可能にする他、株主還元と成長資金の確保の両立に努める方針となっている。外部環境の変化に左右されやすいCRO事業だが、配当利回り4.6%と高水準で推移する中、同社が強調する「スピードと品質」を武器に欧米中心の案件を伸ばしつつアジアを再拡大できるかが業績回復を待てる状況となっている。

<FA>

fisco

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。