タイミー側は「休業補償は必要ない」と主張(公式ホームページより)
“新しい働き方”として持て囃されてきたスキマバイト(スポットワーク)をめぐり、本誌『週刊ポスト』はいち早く、企業側の都合で仕事がキャンセルされるケースが頻発し、「働き手軽視」の実態があると追及してきた。ついに厚労省が注意喚起に動き、業界側も改善を打ち出すが、問題はまだ終わらない。過去のキャンセル分の休業補償について、最大手のタイミーと厚労省の見解に大きな隔たりがあるのだ。
「未払い賃金は300億円以上に達します」
厚労省は7月、〈「知らない」では済まされない「スポットワーク」の労務管理〉というリーフレットを公表し、「労働契約成立時期の明確化」と「休業手当の支払い」の義務を指針として明示した。これを受け、業界団体・スポットワーク協会も適切な労務管理へ向けた考え方を公表して、「働き手の保護」を打ち出した。
問題となっているのが「企業側キャンセル」だ。業界の最大手・タイミーをはじめとするスキマバイトのサービスは、アプリ上で求人を検索して勤務時間や報酬などの条件が合う仕事に申し込む。マッチング後、勤務当日は仕事を始める時と終わる時に勤務先にあるQRコードを読み込めば報酬が確定する。
だがマッチング後に企業がキャンセルしても働き手に補償が支払われず、働き手が不利益を被るケースが頻出した。業界内ではこうした企業都合によるキャンセル率は10~15%の水準とされる。
タイミー側はこれまで「働き手がQRコードを読み込んだ時点」で労働契約が成立すると主張していたが、厚労省が7月に公表した先の指針では、“別途特段の合意”がない場合は、「事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募した時点」において、労使双方の合意があったとして労働契約が成立するとの見解を打ち出した。
問題となるのが、マッチング後のキャンセルに対する未払い賃金の発生だ。現行の労働基準法で過去3年にわたって請求できると定められる未払い賃金は、300億円を超えるとの試算がある。この問題を追及する松井春樹弁護士が語る。
「スポットワーク研究所が推計するスポットワークの過去3年間の市場規模2319億円に業界内で見込まれるキャンセル率を当てはめると、未払い賃金は300億円以上に達します」