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手取り額を左右する「住民税非課税世帯の壁」 大都市部では「年金収入211万円以下」が目安、収入が1万円多いだけで手取りが6万円以上減る逆転現象も

 それゆえ、将来的に受け取る年金の額には注意を払う必要がある。まずは年金手帳や「ねんきん定期便」で自分の年金額の見込みを確認する。

 受給開始を遅らせることで年金月額を増やす「繰り下げ受給」や、受給額を増やすために厚生年金に長く加入して働くことは、資産寿命を延ばす王道とされるが、もし“壁”のギリギリの受給額なら、「あえて年金額を増やさない」という選択もあり得る。

 65歳から受給する年金額が211万円を超える見込みの場合、受給開始を前倒しにする代わりに年金月額が減る「繰り上げ受給」を選んで年金額を減らし、住民税非課税の範囲内にとどまる判断も可能だ。

「ただし、繰り上げ受給は一度選んだら変更できません。長生きするほど年金受給総額が損になるので、慎重な判断が必要でしょう」(柘植氏)

1000円でバス乗り放題も

 住民税非課税世帯のメリットは、税・社会保険料負担が小さいことだけではない。

「一定額以上支払った医療費が還付される『高額療養費制度』の自己上限負担額は、住民税非課税世帯は月2万4600円以下です。それが年金収入212万円の課税世帯になると、月5万7600円まで自己負担となります。

 また、東京都なら70歳以上の住民税非課税世帯は都営のバスや地下鉄などが年間1000円で乗り放題になる『シルバーパス』を利用できるなど、独自のサービスを設けている自治体もあります」(柘植氏)

 直近では住民税非課税世帯に1世帯7万円の現金給付が検討されている。非課税となる境界線を知り、先を見据えて判断することの意味は大きい。

※週刊ポスト2023年12月8日号

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