銘柄選択に時間をかけなくていい
“国家の大盤振る舞い”とも言える新NISAは税コストがかからず「コスパ(コストパフォーマンス)」がきわめて高い。その仕組みを使いながら運用コストの低いインデックスファンドで積み立て投資をすれば「リスパ(リスクパフォーマンス)」も向上する。もうひとつ付け加えると、このやり方は圧倒的に「タイパ(タイムパフォーマンス)」が高い。
新NISAの「成長投資枠」では個別株にも投資できるので、株好きな人は活用してもいいだろう。ただ、ますます複雑化し、忙しくなる現代では、専業投資家でもない限り、個別株などの銘柄選択に多くの時間を割くことは難しいだろう。
だったら、先ほど示した4つのインデックス(※注:「MSCIコクサイ・インデックス」「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」「S&P500」「NASDAQ」。第2回記事参照)に連動するファンドのなかから投資先を決め、自動的に積み立てていけばいい。クレジットカードから引き落としできる証券会社もあるので、いったん設定すればその後の時間コストはゼロだ。それによって生じた時間は、仕事や勉強、趣味やデートなど好きなことに使えばいいだろう。
インデックスファンドへの長期投資は、「コスパ」「リスパ」「タイパ」を最大化できる投資法だ。そのうえ、AIを駆使するヘッジファンドにも勝てる。
「人生100年時代」と言われ、年金生活への不安も尽きない。“長生きリスク”に対処するには、少しでも長く働くこと。健康に気をつけながら70歳、80歳まで収入を得るとともに、並行して積み立て投資を進め、働けなくなる時に備える。多くの人にとって時間はたっぷり残されているはずだ。
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
橘玲(たちばな・あきら)/1959年生まれ。作家。国際金融小説『マネーロンダリング』『タックスヘイヴン』などのほか、『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『幸福の「資本」論』など金融・人生設計に関する著作も多数。近著『世界はなぜ地獄になるのか』(小学館新書)がベストセラーに。
※週刊ポスト2024年3月22日号