今や転職も当たり前の世の中になったとはいえ、まだまだ新卒プロパー主義が根強い日本企業。中途採用に力を入れ始める企業も多くなっているが、大手企業を中心に、依然として新卒採用がメインである企業は少なくない。
エン・ジャパンの「中途入社者の定着」実態調査によると、「中途入社者の定着率が低い」と感じている企業は4割に上っている。一方で、新卒入社した社員でも、3年で3割が辞めているという実態もある。それだけに、近年増えているのが “出戻り社員”だ。
実際、上述の2018年の調査でも、一度退職した社員を“出戻り”で再雇用した企業は全体の72%に上る。2016年の調査から5ポイント増加している。結局、新卒で一度採用した元社員が、再び戦力として見込まれている実態がわかる。中途入社組や出戻り社員たちから、転職にまつわる苦労や本音を聞いた。
30代男性会社員・Aさんは、大手IT企業から大手広告代理店に転職するも、出戻りした社員だ。Aさんが語る。
「新卒で入った企業で、立ち上げから関わったサービスで大きな成果を出すことができました。そして入社3年後、学生時代から憧れていた代理店に第2新卒枠で受かり、2年ほど働きましたが、肌が合わずに退職してしまいました」(Aさん)
出戻りをした理由として、最も大きかったのは「カルチャーの違い」と「中途入社組のプレッシャーの大きさ」だったと話す。
「事業会社と代理店の違いというのもありましたが、一番は転職先のカルチャーが体育会すぎたのと、コネ入社の社員ばかりが贔屓される社風に嫌気がさしたことです。鬱っぽくなっていたところ、当時の役員から『戻ってその経験を生かさないか』と打診され、キャリア採用という形で戻ることができました。
新卒で入った会社は、同じ目標や、価値観を持った人が多くて仕事がしやすかった。その点、大手企業の中途入社は、自分にいくらスキルがあったとしても、生え抜き社員の方が社内人脈などで圧倒的にアドバンテージがあるので、それ以上の成果を常に出し続けなければならないプレッシャーがすごい。新卒至上主義は“悪”だと思っていましたが、大手企業では円滑に仕事を進めるには、ある意味で合理的なシステムだと感じました」(Aさん)