SNS全盛の現在、税務当局の芸能人監視体制はさらに強まっている。国税OBで税理士法人松本の税理士・塩原義文氏が語る。
「税務当局は調査対象の芸能人のインスタグラムやフェイスブックなどを閲覧し、『やけに豪華な食事だな』『高級店で買い物をしていた』と内容をチェックして、申告収入と比較しています。SNSでプライベートを頻繁に更新していた芸能人が急に書き込みをやめたら、『言動に気をつけて』と税理士にアドバイスされた可能性があります」
とくに目を光らせているのが「旅行」だという。
「徳井さんも家族らとの私的な旅行が問題視されましたが、税務当局はホテルの宿泊名簿やパスポート記録、旅行代理店への聞き込みなどから、調査対象の旅行の詳細を洗い出します。一方で腕利きの税理士は、海外旅行先で家族同伴を求めるパーティを設定したり、渡航先でYouTubeをアップさせて、“その場でビジネスをした証拠”にする。税理士はありもしない事実をでっちあげるのではなく、あくまで合法の範囲内で知恵を絞って対抗する」(前出・大手事務所の税理士)
税務調査に入られることを前提として税務申告するケースさえあるという。
「最初から税務調査を覚悟して経費を多めに計上し、実際に調査が入った段階で税務当局と渡り合い、修正申告の額を極力少なく抑える作戦です。税務調査への立ち会いが許されるのは税理士だけですから、ここで当局を説得する力量が試される。あまりに巨額だったり、調査回数が多いといった悪質性がなければ、修正申告すれば大問題にはならない」(同前)
そうした攻防の末に経費として計上できた割合が多かった税理士は、芸能人からの評価を獲得する。
「一般的な税理士は、生活費のうち3割程度を経費として計上させます。5~7割を認めさせればかなりの“凄腕”といわれます」(ベテラン税理士)
※週刊ポスト2019年11月22日号