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上場企業1000社を継続調査するアナリスト「復活する“放置株”を探すには決算説明会が役に立つ」 業績回復期待の企業はどこか

復活する企業に共通している点

 その共通する点とは、業績が赤字となり経営が厳しい時期に、アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催し続けて、トップである社長が登壇して、自ら状況を説明していることだ。

 さまざまな業界の企業を長年リサーチし、業績の推移をウォッチし続けているが、業績がおかしくなっていく企業であれば、決算説明会を聞いていて、「本当にそれで大丈夫なのか?」と疑問が浮かぶ場面が出てくるものだ。

 もちろん、外部から見ている立場からは、企業の内部の本当の状態は分からない。上場企業は決算数値や、会社側が任意で開示する説明資料が示されるが、その数字や資料ごからでは、針穴から天井を覗くような程度のようなものだ。

 しかし、継続的にその企業の業績を見ていけば「大丈夫なのか?」と思ったことがきちんと検証できる。私の場合は、ずっとウォッチしていることで、厳しかったときの状況を振り返ってヒアリングする機会も増えた。そういう経験をもとに断言すると、厳しい現実に対して、社長自らが向き合う企業の中には、復活、再生にかかる時間に違いはあれど、黒字転換に成功する企業は多い(もちろん、上場廃止してしまったためその後を追えない企業や、現在も赤字で再生に取り組み中の企業もあるが)。

 上場している企業の社長が、外部の本音に自ら直接触れられる機会というのは、かなり少ないものだ。営業の結果に対して真摯に向き合う社長は多い一方で、広報・IRに関しては、自らやらない社長も少なくない。

 苦しい業績結果や、厳しい先行きに対して、冷たい反応をアナリストや機関投資家、記者から受ける場である決算説明会自体を開催しなくなったり、自ら登壇しなくなって外部の本音から逃げてしまう社長は多いものだ。

 赤字が出ているのは、そのビジネスがうまくいっていない結果だ。その状態が続いているというのは、そのビジネスを運営している企業が困難な状況に陥ってしまっているということ。しかし、トップである社長が現状から目を背けていたり、直視しなかったりすると、その対策は遅れてしまう。本来なら、大きなリストラをしたり、事業を止めたりしてビジネス自体を変えていくなどの判断が求められるにもかかわらずだ。

 そもそも上場企業で社長になる人は、優秀な人材のはずだ。そういう人が、厳しい現実を放置するとか、的確な判断ができなくなっているというのは、現実から逃げてしまっているか、厳しい現状を把握するための情報をうまく収集できていないということではないか。

 会社がうまくいっていない時期は、現場からも厳しい状況が、きちんとありのままに報告されていないこともあると聞く。働いている人達も人間なので、自分たちにとって都合の悪い情報を報告しないということもあるのだろう。そして、厳しい状況に陥っている会社では、都合の悪い情報に触れる機会を社長が作ろうとしないケースもあるようだ。

実際に業績回復を遂げた2社

 では、苦しい時期でもトップ自らが決算説明会に出席し続けることで、実際に業績を回復させ、株価が上昇したのは、どのような会社か。いくつか挙げてみよう。

 レカム(3323)という会社は、現在、アジア地域で、企業向けの事業効率化のソリューションビジネスを展開して、足元では最高益を更新している。しかし、以前はビジネスホンなどの通信機器の販売事業が中心で、大きな投資の失敗から、わずかしか利益が出なかったり、赤字にあえいでいた時期があった。

 当時の決算説明会に、私はずっと出ていたが、参加者が数名しかいないようなアナリスト向けの決算説明会でも、創業者の伊藤秀博社長は厳しい状況をきちんと説明していた。その後、厳しい状況で育成した事業が実を結び、中国子会社が中国の新興市場に上場するなどの実績を残し、一時、株価が底値から10倍以上になった。

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