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上場企業1000社を継続調査するアナリスト「復活する“放置株”を探すには決算説明会が役に立つ」 業績回復期待の企業はどこか

 デジタルプラス(3691)という会社は、上場したときは、リアルワールドという社名で、クラウドサービスの提供ビジネスをしていた。その後、事業が立ち行かなくなって、5年連続で営業赤字に陥った。私は厳しかった時期にずっと決算説明会に出ていたが、ここも創業者である菊池誠晃社長は決算説明会に登壇して状況を変えようとしていることを、きちんと伝えていたのが印象的だった。数名しかアナリストが参加しないような場に登壇することは、経営者にとっては辛いものだっただろう。そこから逃げなかったからこそ、ポイント事業主体への大幅な事業構造の変革を断行できたのではないか。そして、前期の2022年9月期決算では、黒字転換を果たした。

 会社が厳しい状況にあるとき、決算説明会をきちんと開催しているのか、そして社長自らが登壇しているのかは、ホームページなどの開示資料から確認できる。先述したとおり、こういう会社は、元々の「分母」となる株価が小さいために、黒字化という「正常」に戻った際には、株価が何倍にもなりやすい。

業績苦戦中でも社長が決算説明会に登壇している会社

 レカムやデジタルプラスが、これからどう変わっていくのかは期待とともに注目し続けていきたいが、現在、営業赤字の会社で、株価も二桁ながら、社長が決算説明会で、登壇している会社もあるので紹介したい。

 紳士服チェーンのタカキュー(8166)は、もともと販売が苦戦しているなかで、コロナ禍で需要が大幅に減少し5年連続の営業赤字に陥っている。そんな状況でも、大森尚昭社長は決算説明会に登壇し続けている。

 コロナ禍で傷んだ中でも、大幅なリストラを断行して、コスト構造を改革。アフターコロナで、販売が回復してきており、今期は黒字転換を見込んでいる。来年度は、資本政策に関わる億単位のコストがなくなることもあり、黒字体質は定着するのではないか。

 放送用のネットワークインフラ機器やシステムを開発しているメディアリンクス(6659)も、大型案件の失敗が続いて赤字が続いている。ハンドリングが難しい放送局が取引先であるため、なかなか収益構造の変革に取り組み切れていなかった会社だが、菅原司社長は赤字に苦しむなかでも、決算説明会に登壇し続けている。時間はかかった印象だが、新規案件の目処が立ちつつあり、来期の黒字転換を見据えているようだ。下期の進捗次第では、今期通期での黒字転換の可能性もあるかもしれない。

 未来のユニクロや、テスラを探すのも投資の醍醐味のひとつかもしれないが、一方で赤字にあえいで放置されていて、復活できそうな企業を探し出すのもまた、投資の醍醐味ではないだろうか。

【プロフィール】
小島一郎(こじま・いちろう)/株式会社分析広報研究所 代表取締役チーフアナリスト。大手シンクタンクでのアナリスト、複数の上場企業で広報IR関連業務を行った後、独立。業界・企業を横串しにする独自リサーチを10年以上継続し、その上場企業数は1000社以上。企業の価値向上コンサルティングや広報IR活動の実務支援をおこなう。著書に『成長する企業がやっている分析する広報』(みらいパブリッシング)がある。

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