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伊藤塾・伊藤真塾長が「訴訟弁護士としての活動」や「SNS発信」を捨てた理由 集中するために必要な「割り切り」の考え方、複数の作業を進めるには「切り換え」が大切

いったん「ここでやめる」と決める

 人間の頭は、その時間に集中して考えられるのはひとつだけ、というようにできているのだと思う。同時にいくつも考えているように見えるのは、瞬時に切り換えているだけだろう。Aを考えて、次にBを考え、Cを考える。

 そのとき、ふつうはAを考えてある程度は結論を出してからBを考え、ある程度は結論を出してからCに行くと思うのだが、同時に集中して考えられる人は、Aを途中まで考えてBに切り換え、Bを途中まで考えてCに切り換え、Aに戻ったときにその途中からスタートできるのだと思う。

 こんなイメージだ。ちょうど動画を途中でとめて、別なものを見て、またそこから再生できる人が、同時にいくつも集中できる人に見えるのではないだろうか。

 集中できない人は、A→B→Cと考えて、Aに戻ったときに、振り出しに戻ってまたAの最初から始めるのだろう。ストップボタンを押すと、また最初に戻って同じことをくり返す。それでは永遠に考えが深まらないので、同じところをぐるぐるしてしまう。

 だからもとに戻らないで、その途中から考え続けられるようにするためには、どうすればいいか。

 私は、「記録に残しておく」のが大事だと思っている。紙に書いておいてもいいし、いったん結論を出してしまうのでもいい。あるいは、もうこのことは考えてもしかたがないから、いったんやめると決めて、そこから先に進んで考えるようにする。

 その意味ではやはり、集中するためには「割り切り」が必要だ。さんざん考えてここまで来たのだから、もう後戻りせず、そこから先を考えようと、切り換えをうまくやることがいろいろなことを同時に考えられるということだ。

 どちらにしろ、人間の頭はAを考えて、次にBを考える。いわば単線である。人間の声もそうだが、ホーミー(モンゴルの歌唱法のひとつで、一人で二つの声を同時に出すこと)のように、二つの音を同時に出すことは、ふつうはできない。

 だから、ひとつのことしか考えられないのは、いたって正常なことである。同時にいくつものことに集中できないからといって、落ち込むことはない。

 聖徳太子のように七人の話を同時に聞いて判断できた人もいたというが、もし聖徳太子が本当にそんなことができていたのだとしたら、彼はAを考え、瞬時にBを考え、次の瞬間Aの進んだところからまた考える、というように瞬時に切り換えていくことにおそろしく長けていた人だったのだと思う。

 結局、欲張って、同時に三つも四つも考えようとせず、ある程度、ひとつのことに集中して、結論らしいものを出してから次に行くのが、考えを深める意味でも効果的だと考えている。

※伊藤真・著『考える練習』(サンマーク出版)をもとに一部抜粋して再構成

【プロフィール】
伊藤真(いとう まこと)/1958年、東京生まれ。伊藤塾塾長。1981年、東京大学在学中に司法試験合格。その後、受験指導を始めたところ、たちまち人気講師となり、1995年、「伊藤真の司法試験塾(現、伊藤塾)」を開設する。「伊藤メソッド」と呼ばれる革新的な勉強法を導入し、司法試験短期合格者の輩出数全国トップクラスの実績を不動のものとする。「合格後を考える」という独自の指導理念が評判を呼び、「カリスマ塾長」としてその名を知られている。現在、弁護士として、「1人1票」の実現のために奮闘中。『夢をかなえる勉強法』『夢をかなえる時間術』『記憶する技術』『深く伝える技術』(サンマーク出版)、『伊藤真試験対策講座(全15巻)』など著書多数。

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