大阪・関西万博に展示される「ミライ人間洗濯機」(時事通信フォト)
かつての万博には「明るく、楽しい未来」が詰まっていた──。それから55年の時を経て、再び大阪の地で開催される万博は、現代日本が描く未来像をどう提示するのだろうか。2つの大阪万博を比較して見てみたい。
「明るい未来」から「現実への解決策」に
「万博のあり方は大きく様変わりしています」
そう話すのは1970年の大阪万博(日本万国博覧会)、今回の大阪・関西万博に精通する大阪公立大学特別教授の橋爪紳也氏。
「前回は『人類の進歩と調和』がテーマで、科学技術や文明への信頼をベースに、“実現するかどうかわからないもの”も含め明るい未来像が提示されました」
今回の万博は『いのち輝く未来社会のデザイン』をテーマに掲げるものの、提示する「未来像」のビジョンは異なり、より現実社会に即したものになっているという。
「70年万博の後、人類は環境破壊など様々な課題に直面するようになった。理想的な未来像よりも現実的な課題の解決策を示す万博になっています」
典型的なのが日本館だろう。微生物の働きでゴミを水に変え、光合成によって藻類が有機物を生むことで持続可能なモノ作りを実現する──そうした「循環型社会」のあり方を提示する。
1970年の大阪万博に比べ、今回の万博は堅実なコンセプトや工事の遅れなどから冷ややかな視線も送られている。だが、橋爪氏はこう言う。
「前回の万博を知る世代こそ時代の移り変わりを実感でき、今回の万博をより楽しめるのではないでしょうか」