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「どう考えても不公平」都内の私立高校受験で横行する“塾推薦”という裏ルートの存在 私学協会は「もし実態としてあるのならルール違反」と指摘

高校受験における「塾推薦」の問題点とは何か(写真:イメージマート)

高校受験における「塾推薦」の問題点とは何か(写真:イメージマート)

 私立高校受験においては「併願優遇」(または合格確約)という制度がある。大まかに言えば、受験した高校がすべて不合格になり進学先がなくなる事態を防ぐ制度で、東京なら「都内私立高等学校入学者選抜実施要項」にもそのルールが明記されている。だが、そこに書かれていない高校入試の「裏ルート」が存在しているという証言を、教育関係者から得た。

「併願優遇」と同様の制度は、東京に限らず、多くの地域で導入されている。第一志望校(主に公立高校)を受験する前に、滑り止めの高校の合格を確保するため、その高校と中学校の担当者が協議して、個々の生徒について内申点等を基準に、ほぼ合格を確約するしくみだ。併願優遇の合格を出すのは、一般に学力水準(受験偏差値)で中堅から下位の私立高校で、対象となるのは、その学校よりも上のレベルの高校を第一志望として受験する生徒である。

 高校側としては「合格をほぼ確約するかわりに、併願先(第一志望)に落ちたら、うちの学校に必ず来てください」という形で、学力優秀な生徒を確保する狙いがあり、生徒側としては滑り止め校の合格を得たうえで、第一志望にチャレンジできるというメリットがある。

 だが、学力が高く、模試では好成績の子でも、音楽や体育などが苦手だったり、宿題や提出物を出さなかったりすると、中学校の内申点が下がり、『併願優遇』で合格を取れる私立高校が限られてくる。そうした状況から生まれてきたのが、“塾推薦”という高校受験の裏ルートだという。

 フォロワー5万人超のXアカウント「東京高校受験主義」を運用する現役塾講師の東田高志氏が、その実態を明かす。

「私が知っているのは都内のケースですが、併願優遇の裏ルートとして“塾推薦”がある。大手の進学塾と私立高校が連携し、内申点は低いが模試の成績はいい塾生を塾が高校に推薦し、学校が併願優遇での合格を確約する。生徒は内申点で判定する“正規のルート”では取れない学校から併願優遇が取れ、高校側は大学進学実績に貢献してくれそうな生徒を確保できる。両者にとってメリットがあります」

塾に通っていない子はその恩恵を受けられない

 だが、そこには大きな問題点がある。東田氏が続ける。

「塾推薦の一番の問題は、塾に通っていない子や、家計や通塾距離の問題などで通えない子が、その恩恵を受けられないことです。“裏ルート”がある塾に通っている子だけが、ルール違反によって得をするというのは、どう考えても不公平です。

 高校受験のしくみというのは、子供の進学先がないという事態が起きないよう、自治体や学校、私学協会が何十年もかけて議論して研鑽し、維持してきたものです。そのルールを守らない学校がどんどん出てきたりすると、制度が瓦解して、将来の受験生が損をします」(東田氏)

 都内の私立高校の入試要項をとりまとめて都に提出している一般社団法人東京私立中学高等学校協会(私学協会)は、マネーポストWEBの取材に対し、「“塾推薦”という言葉を聞くことはあります」と認めたうえで、「もし実態としてあるのなら、ルール違反と言えます」と回答している。

 この塾推薦はどのような学校と塾のあいだで、どれぐらいの規模で行われているのか──。その実情と、私学協会の見解については、フリーライターの清水典之氏がレポートする関連記事《都内私立高校受験で横行する「塾推薦」という“裏ルート”の実態 特定の塾に通っているか否かで合否が決まる…「中堅校を中心に10校前後。大手塾で積極的なのは2社」》で詳報している。

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