可愛らしさとワイルド感を絶妙に融合したエクステリア
革命的な小型車として1959年に登場したオールド・ミニ以来、丸型ヘッドライトはMINIのDNAとして受け継がれています。しかし、エースマンのフロントマスクは少し違います。LEDヘッドライトはまったく新しくデザインされ、複雑な八角形の輪郭をもつフロントグリルと組み合わされ、先にデビューしたひとクラス上のSUV、カントリーマンにも通じる表情です。
さらに前後のホイールアーチを含め、ボディの下部を1周するように張り巡らされた黒い樹脂パーツがSUVらしい独特の力強さを表現し、コンパクトSUVとはいうものの、背の高さも相まって押し出しの強さやワイルド感が表現されているのです。その佇まいは愛らしさと力強さの「程よい融合」とも言えるデザインで、十分に個性的。自然の中で、というより街の風景に似合う印象です。
全体としても小さく見えるのですが乗り込むと予想以上に広く使い勝手のいい室内に驚きます。リアシートは3人がけで乗車定員は5名であり、乗車定員が4名(5ドアハッチバックは5名)のベーシックな3ドアハッチバックと比べると、やはりゆとりがあります。とくに足元のスペースはホイールベース(前後車軸間の距離)が3ドアハッチよりも80mm長いため、ゆったりとしています。
さらにリアシートの背もたれは6:4の分割可倒式で、実用性もしっかりと確保。リアハッチを開けると5名乗車時でもそれなりに広く、荷室容量は300リッターでクーパーの5ドアより30リッターほど広く、床の奥行きも600mmあります。もちろんリアシートの背もたれをすべて前方に倒せば最大1,005Lのスペースへと拡大します。
室内の広さを確認したところで運転席に腰を下ろします。ダッシュボードの中央には、やはりMINIの伝統を受け継ぐように大きな丸型メーターがあります。最新のMINIには直径240mmという大きな円形有機ELディスプレイが装備されています。そのディスプレイの下にはトグルスイッチなどが横一列に並び、ここでもオールド・ミニからのDNAを感じさせます。こうしたMINIの伝統を感じさせながら最新の装備をデザインするセンスは本当に感心するばかりです。このデザイン性に優れた室内にいるだけでもドライブが心地よくなるのです。さらに室内には再生ポリエステルの糸を使用して製造されている部分が多く、温かみなる風合いに仕上がっています。
そんなインテリアに身を置きながら走り出してみるとBEVならではのスムーズで途切れのない加速感を味わえます。ボディの大きさや1.7tという車重からするとその乗り味は、カントリーマンのBEVモデル(車重1.9t)と同じように、しっとりとしたものであろうと予想していました。ところが、実際はキビキビとしたゴーカート感のある5ドアのクーパーSに近く、かなりスポーティ。もちろんアクセルペダルの踏み込み量にピタリと呼応するレスポンスの良さを見せながら力強くシームレスに加速していきます。それに加え、低重心ボディの走りによって曲がりくねったコーナリングは安定感があります。
見切りのいいボディと安定感のある走りによって市街地での使い勝手もかなりいいと思います。確かに4WDの設定がないことは、アウトドア派には少々残念かもしれませんが、オールド時代から雪には強いという伝統があるのも事実。実際に雪道で走らせても物足りなさやストレスを感じることはほとんどありません。「エースマン」は、程よいサイズ感による扱いやすさとBEVらしい切れのいい乗り味による「都市型クロスオーバーSUV」として実に魅力的な選択肢でしょう。
キャビンに広がる世界観はMINIそのもので最先端のモードさえ感じる。デザインと質感に惹かれて購入する人は多いという
丸型メーターの下に横一列に“トグルスイッチ”などを並べたスイッチ類。操作性の良さもあるが、このレイアウトもオールド・ミニ以来受け継がれてきた「良きデザイン」だ