「伝説の投資家」清原達郎氏が明かした暴落時の投資術(撮影/野口博)
株式市場は一気に全面安の展開となる「暴落」――。昨年8月には米国の景気減速への不安や日銀利上げが引き金となって、日経平均が史上最大となる4451円の下落を記録した。今年に入ってからは、トランプ米大統領の関税政策による急落もあった。そうした局面でどう動けばいいのか。「伝説の投資家」に独占取材した。
最後の公表となった2005年の日本の高額所得者公示制度、いわゆる「長者番付」で1位となったのが、「タワー投資顧問運用部長」の清原達郎氏だ。これまでに築いた個人資産は800億円超にのぼり、昨年上梓した『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)は25万部超のベストセラーとなった。2018年に咽頭がんの手術で声帯を失った清原氏が、メールで独占取材に応じた(週刊ポスト5月9日発売号掲載)。
取材に対し清原氏はトランプ関税による市場への悪影響について、慌てる必要はないとの見解を示した。トランプ氏の発表があまりにも極端だったので、〈これ以上の悪材料は株式市場には見当たりません〉(以下、〈〉内は清原氏)としている。
日米の株価がさらに下がるリスクを認めつつも、暴落時の対応については〈一番やってはいけないことは下がった時に売ること〉だと強調した。
暴落を目の当たりにするとパニックになり、保有する株の下落に耐えきれずに損失を承知で売却する「投げ売り」に走りたくなる。そうした投資家の心理が“売りが売りを呼ぶ”展開につながり、株価の下落速度を加速させる。しかし、そんな状況下で取るべき行動は損切りではなく、「もっと買う」か「放置する」ことだと清原氏は説いた。
実際、2008年のリーマンショック時にも全財産をつぎ込んで買い増して大きなリターンを得たという。昨年8月の暴落と今年4月のトランプ関税ショックの局面でも、「買い」に動いたといい、具体的に買った3銘柄を挙げた。そして、〈株価が暴落した時こそ買い時〉〈株価が下がった時に買い増す資金がない人は、株が趣味でない限り株式投資はやめるべきです〉とアドバイスした。
その他にも、米国市場の評価や為替リスクの捉え方、日本企業の今後のあり方など、清原氏は多岐にわたる考察を披露した。関連記事《【独占取材】資産800億円の投資家・清原達郎氏が明かす「暴落時に仕込んだ3銘柄」 トランプ関税ショックの見方と、米国株ブームの中で一貫して日本株に注力する理由》では、週刊ポスト掲載記事を全文公開、清原達郎氏がトランプ関税ショックで仕込んだ銘柄の具体的な名前を明かしている。
【プロフィール】
清原達郎(きよはら・たつろう)/1981年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業。同年、野村證券に入社、海外投資顧問室に配属。スタンフォード大学で経営学修士号(MBA)取得後、1986年に野村證券NY支店に配属。1991年、ゴールドマン・サックス証券東京支店に転職。その後モルガン・スタンレー証券、スパークス投資顧問を経て、1998年、タワー投資顧問で基幹ファンド「タワーK1ファンド」をローンチ。2005年に発表された最後の高額納税者名簿(長者番付)で全国トップに躍り出る。2023年、「タワーK1ファンド」の運用を終了し、退社。はじめての著書『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)が話題に。