札幌市と福岡市は正反対の動向を見せる(札幌の時計台と福岡タワー/写真:イメージマート)
札幌市・福岡市で10年後に不動産価格が「上がる駅」「下がる駅」はどこか──。国土交通省が3月19日に公表した2025年の全国の公示地価は、前年比プラス2.7%と4年連続で上昇した。ローン金利の上昇を見据えた住宅購入の駆け込み需要も加速するが、近年の不動産バブルに警鐘を鳴らすのは、住宅ジャーナリストの山下和之氏だ。
「少子高齢化の影響もあり、地域によってはいま高騰していても近い将来ピークアウトし、下落傾向になる可能性は十分にあります。不動産価格はいったん下がり始めると想像以上に急速に下落することも珍しくない。バブルが続くと思い込むのは危険です」
重要なのは、上がる地域と下がる地域を見極めることだ。その指標となる数字を「駅ごと」に算出したのが不動産コンサル会社のリーウェイズである。5億件の物件データをもとに不動産の市場価格のAI分析を行なう同社は、国交省のシンクタンク・国土技術政策総合研究所が2024年に公表した『将来人口・世帯予測ツール』をもとに、全国の駅ごとの人口増減を予測。2025年と2035年の数値から10年後の増減を算出した。同社代表取締役CEOの巻口成憲氏が言う。
「今後、人口増加が予測される地域では若年層や家族層の定住ニーズが高まる一方、高齢化が進むエリアでは地域経済の衰退など社会的な課題が深刻化していきます。弊社では、最寄りの鉄道駅から半径800m以内の人口変動を軸に分析・洞察を重ね、持続可能な都市計画や社会インフラ整備の一助になることを目的に、このランキングを作成しました」
駅周辺の人口を「ここまで細かく予測したデータは見たことがない」と驚くのは、不動産市場の最新動向に詳しい「さくら事務所」取締役副社長COOの山本直彌氏。
「このランキングは各都道府県や都市の人口増減が駅別に示されていて非常に興味深い。人口増減はその地域の不動産価格に直結する重要な要素です。基本的に不動産価格は需給バランスで決定される。人口が増える駅は当該エリアに住みたいという需要の高さを表わす指標となり、そのエリアに持ち家がある人には、今後のライフスタイルの選択、自宅の売り時を考えるヒントになります」
従来のイメージを覆した札幌市
札幌市は従来のイメージを覆した。山下氏が言う。
「札幌は車通勤が主流のエリアと見ていましたが、東京・大阪同様に中心部への人口集中が見られます。近郊の千歳市に建設中の半導体工場(ラピダス)による雇用創出も期待でき、2035年には予測以上に人口が増加するエリアも多いのでは」
その札幌と正反対の動向を見せるのが福岡市だ。
「中心部の天神(ワースト5位)は、不動産価格の高騰に加え、福岡市主導の再開発計画で完全なるビジネス街へと変容しつつある。博多同様、住む町ではなく“通う場所”“遊ぶ場所”という認識が定着した可能性があります」(同前)
地域ごとの二極化を前に、不動産とどう向き合うべきか。山下氏はこうアドバイスする。
「将来的に自宅の売却を考える場合、そのエリアの不動産価格の予測だけでなく、築年数も考慮して“いつ売るか”を早めに決めることが大切です。再開発などで地価の上昇が期待できても、築30年、40年と経過すれば売却価格の下落は避けられない。上がる駅に住んでいるから持ち続ければよいわけではない。下がる駅に住んでいる場合はなおさら早めに売ったほうがいい。市場動向をしっかり見極めることが重要です」
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※週刊ポスト2025年6月20日号