*13:07JST オープンドア Research Memo(7):潜在的な海外旅行の需要回復期に対応すべく、コンテンツ拡充などを進める
■オープンドア<3926>の今後の見通し
1. 2026年3月期の業績見通し
2026年3月期の業績見通しについては、日本人のレジャー旅行市場は、円安などのマクロ要因による変動幅が大きいことに加え、状況によってマスプロモーション施策も流動的であることから、精度の高い予測が困難なため現時点では未定とし、合理的な予測が可能となった時点で公表する予定である。同社のビジネスモデルは相対的に損益分岐点が低く、限界利益率が高いため、旅行需要の回復に伴い売上も回復してくれば、業績が大きく改善することも期待される。コロナ禍の収束に伴い、旅行需要の回復とともに同社の業績も改善基調が続くと見られるが、円安による海外旅行費用の高止まり、インフレによる航空運賃の上昇、航空座席数の不足などにより海外旅行の回復は緩慢なペースに留まる可能性があるリスクに留意する必要もあるだろう。なお、同社では市場状況も見ながら、プロモーション施策についてテレビCMやネット広告などを柔軟に検討していくため、旅行需要の回復ペース次第ではプロモーション費用が増加に転じる可能性もあるだろう。
2. 重点施策
同社では、不確実な要素が多く2026年3月期の業績予測は困難だが、強固な財務基盤のもとで、将来的なレジャー旅行市場の需要回復に伴う反転攻勢を狙う考えである。開発投資を継続的に推進し、サービスの拡充及び競争力の強化を図るほか、引き続きエンジニアなど開発部門のリソースを強化する。多くの競合他社がシステム開発を外注しているのに対し、同社ではほぼすべてのシステムを内製化しているため、市場トレンドに合わせて柔軟かつ効率的な開発環境を整えながら、旅行需要の回復に合わせて機動的にサービスを開発・展開していく。また、コロナ禍で抑制気味としていた広告宣伝費についても、テレビCMを打つなど市場の回復タイミングを見極めたうえで、認知度向上のためのマスプロモーションも積極的に推進するものと見られる。
(1) トラベルコ
主力サービスの「トラベルコ」では、市場ニーズに対応したプロモーション、既存メニューのリニューアル及び機能強化、新規連携強化による商品情報の拡充、国内及び海外の人気スポットなどの観光情報拡大、各メニューのクチコミ・評価サービス拡充、サイトデザインリニューアルなどによって競合サイトとの差別化を図り、一段と競争力を高める。今後の来るべき旅行需要回復期には、これらの取り組みの成果が顕在化するものと期待される。新メニューとしては、クルーズ旅行比較をリリース予定である。クルーズ旅行の市場はブルーオーシャンのため、クルーズ旅行需要の回復をいち早く取り込むことが期待される。また、AI開発も加速する方針で、自然言語での商品検索システムを構築し、将来的には自社で構築したAI検索やAI FAQなどのAIサービスのノウハウを他社向けに提供することも視野に入れているようだ。
(2) TRAVELKO
海外版「TRAVELKO」については、現地大手旅行サイトとの連携強化を進め価格優位性を確立することで、同社が予想する旅行需要回復期に海外ユーザーの様々な需要の取り込みを図る。また、UI(ユーザーインターフェイス)ローカライゼーションの強化、アプリ版TRAVELKOの機能拡充、観光情報の拡充、SEO強化、プロモーションも検討しているようだ。
(3) 業務渡航システム
業務渡航市場はすでにコロナ禍前の需要を上回る水準まで回復しており、子会社ホテルスキップが手掛ける業務渡航システムの需要においても順調に拡大しているため、引き続き旅行会社向けの拡販を進める。
(4) 旅行会社向けオンライン予約システム
旅行会社向けフライト・ホテルオンライン予約システムの追加機能の開発を進め、導入拡大を狙う。
(5) ECマーケットプレイス
海外市場において、日本伝統工芸に関心は高まっており、工芸美術作品を扱うGALLERY JAPANでは海外需要の伸びが顕著で既に海外への販売が国内を上回っている。このような状況を鑑み、より市場規模の大きい日常工芸品市場をターゲットとして、KOGEI JAPANにて越境を含めたECマーケットプレイス事業を開始する予定である。
3. 中長期の成長イメージ
2025年3月期はインフレや円安進展により海外旅行の回復ペースが緩慢だったため、売上高伸び率は再びマイナスとなった。同社のコロナ禍前の2016年3月期~2020年3月期売上高の年平均成長率(CAGR)は18.9%と高水準だったことから、今後、インフレや円安が鎮静化し旅行需要が戻れば、今後も継続的に年率20%以上の売上成長を目指せると弊社では見ている。日本人の潜在的な旅行ニーズは非常に高いが、インフレや円安によって相対的に海外旅行の割高感が強まっているため、今後、これらのマクロ面での阻害要因が鎮静化へ向かえば日本から海外への潜在的な海外旅行需要が一気に顕在化する可能性もあるだろう。
旅行業界のEC化率はほかの業界と比較して高いと言われているが、ミドル層やシニア層での開拓余地は大きい。こうした世代では利便性の良いサイトづくりがより重要になってくるため、今後もAIの活用や動画コンテンツの導入、クチコミ・評価サービスの拡充が進むと弊社では予想している。旅行ジャンルについても、民泊やクルーズ船旅行、レストラン予約など依然として開拓余地は大きい。また、海外ユーザーの取り込みに成功すれば、一気に成長ポテンシャルも高まるだけにその動向は注目される。海外では様々な旅行ジャンルをまとめて横断検索できる比較サイトはほとんどないだけに普及余地が大きく、こうした戦略を推進することで、旅行比較サイトで世界トップ企業を目指す。
■株主還元策
内部留保の充実を優先し、業績拡大による株価上昇で株主に報いる方針は変わらず
同社は、株主に対する利益還元を経営上の重要施策であると認識しているが、高い成長の持続により株主に報いることを重要な経営課題としており、同社はこれまで成長につながる内部留保を優先し、配当を行っていない。将来的には、各期の業績や財務体質を勘案しつつ利益還元を検討する方針だが、当面は業績拡大を図り、1株当たり当期純利益の増大により企業価値(=時価総額)を高めることが、一番の株主還元であると考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 星 匠)
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