*16:11JST kubell Research Memo(1):課金ID純増数の成長率が加速。EBITDAは業績予想を上回る進捗
■要約
1. 会社概要
kubell(クベル)<4448>は、国内最大級のビジネスチャットサービス「Chatwork」の提供や、業務のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を推進し、中小企業の生産性向上を支援する業務プロセス代行サービス「Chatwork アシスタント」をはじめとするBPaaS(Business Process as a Service)を展開する企業である。同社の強みは、日本国内の労働市場が抱える構造的課題に対し、的確なソリューションを提供している点にある。少子高齢化による労働力不足や中小企業の生産性向上の必要性に対応するため、ITリテラシーが低い企業でも容易に導入・活用できるツール「Chatwork」を中核に据え、多くの中小企業に貢献している。「Chatwork」は日本国内で91.4万社(2025年3月末時点)の導入実績を持ち、特に中小企業層に向けたサービスの提供により競合との差別化に成功している。さらに、BPaaSという新しいクラウドサービスモデルを推進しており、業務プロセスをクラウド上でアウトソーシングすることで、中小企業のDXを支援している。これにより、DXが進みづらいIT未熟層であるマジョリティ市場に対しても、導入しやすい形で提供していることが大きな強みである。
2. 業績動向
2025年12月期第1四半期の連結業績は、売上高2,234百万円(前年同期比15.5%増)、営業利益76百万円(前年同期は13百万円の損失)、経常利益70百万円(同16百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純利益29百万円の損失(同43百万円の損失)となった。広告宣伝費や業務委託費を抑制したことにより、EBITDAは285百万円(前年同期比129.2%増)と大幅な増加を記録し、通期業績予想を上回るペースで推移している。売上高も前年同期比15.5%増と堅調で、進捗率は通期予想の22.9%に達しており、想定どおりの進行状況と言える。一時的に鈍化していた課金ID数も足元で回復基調に転じ成長が加速。解約率の低下も続いており、価格改定の影響が2024年7月で一巡したことに加え、アクティブユーザーの増加によるサービス満足度の向上が背景にあると見られる。BPaaS事業では、売上成長に対応したオペレーターの採用とオンボーディング体制の構築が順調に進んでおり、人的キャパシティの拡充により受注能力も高まっている。加えて、AIエージェントの導入に関する検証も進んでおり、業界トレンドを捉えた取り組みとして同社の事業戦略における重要要素となっている。これにより将来的な原価圧縮や粗利改善も期待される。2025年12月期は中期経営計画の2年目に当たるが、EBITDA及び営業利益の双方で大幅増を達成しており、非常に順調なペースで進捗していると弊社では見ている。
3. 2025年12月期の業績予想
2025年12月期の業績予想は、売上高9,741百万円以上(前期比15.0%増以上)、EBITDA1,000百万円以上(同16.7%増以上)としている。各事業における重点施策としては、Chatwork事業では、各KPIの詳細開示からも読み取れるように、課金ID数やARPUを着実に伸ばす施策が講じられている。セールスマーケティング部門も筋肉質な組織となってきており、さらなる成長の加速が期待される。BPaaS事業は今後さらに成長へ向かうフェーズにあり、人員も増加する見通しである。同事業の売上高は、全社売上高に占める割合が大きくなるほど、業務効率の向上や利益率の改善、ほかのサービスとの連携による相乗効果が生まれやすくなるという特性があり、その結果として、事業全体の成長スピードが一段と高まる構造になっている。2025年12月期は成長率の底であり、翌期以降の加速的な成長に向けた投資フェーズであると弊社では見ている。
■Key Points
・国内最大級のビジネスチャットサービス「Chatwork」や、業務プロセス代行サービス「Chatwork アシスタント」をはじめとするBPaaS事業により中小企業の生産性向上を支援
・2025年12月期第1四半期の業績は、EBITDAは前年同期比129.2%増の大幅増を記録。営業利益も再び黒字化を達成
・2025年12月期の業績予想は、「Chatwork」のさらなる普及とBPaaS事業への積極的な投資を成長ドライバーとして、着実な成長と収益性の改善を見込む
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
<HN>