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【注目トピックス 日本株】エラン:医療介護業界の構造変化を背景に持続的成長、海外事業と配当政策にも注目

*16:43JST エラン:医療介護業界の構造変化を背景に持続的成長、海外事業と配当政策にも注目
エラン<6099>は、医療・介護施設向けに衣類や日用品をセットで提供する「CS(ケア・サポート)セット」サービスを主力事業とする企業である。1995年に神奈川県で創業し、寝具販売業を経て、2003年に病院向けの入院セットとしてCSセットを開発。長野県松本市に本社を置き、2024年には売上高475億円を超え、全国2,570施設と契約するなど、業界トップシェアを誇るまでに成長した。このような高成長の背景には、病院や介護施設の現場課題を丁寧にすくい上げ、サービスに反映するという柔軟かつ実直な姿勢がある。

同社のビジネスモデルは、CSセットという定額制のパッケージサービスを提供し、患者・入居者に対して衣類・タオル類のレンタルと日用品の供給を行うというものである。利用者は「手ぶらで入院・退院」が可能となり、施設側にとっても職員の業務負荷軽減と新たな収益源確保に寄与する仕組みである。加えて、BtoCモデルにおいて直接的な請求や問い合わせ対応といった業務を同社が担うことで、施設側の負担を大きく軽減できる点も評価されている。全国展開を支えるにあたり、同社は協力企業とともに独自の物流体制を構築し、地域差のあるニーズにも応えられる柔軟な運営体制を実現している。

競合環境においては、CSセット市場への新規参入が年1~2社程度確認されており、全国における競合は約30社とされる。ただし、全国展開しているのは同社含め2社のみであり、他社は地域限定のサービスにとどまっているのが実情である。内容の多様性や高級感ある寝間着などの選択肢も提供しており、顧客の細やかなニーズに対応できる点で、単品レンタル事業者とは一線を画している。また、既存リネンサプライ業者との共存を前提にサービスを設計している点も他社との差別化要素であり、敵をつくらず味方を増やすという姿勢が、結果として高いリピート率(96%以上)につながっている。

2025年12月期第1四半期の連結業績は、売上高13,433百万円(前年同期比16.9%増)、営業利益1,187百万円(同12.1%増)となった。CSセットの新規契約施設の獲得と利用者数の着実な増加が寄与し、売上・利益ともに2桁成長を達成した。特に、直近の新規契約施設が57件にのぼり、導入促進が奏功している。一方、オリジナル患者衣「lifte(リフテ)」の導入拡大に伴い、約3.1億円の原価計上が発生したことから、売上総利益率は前年同期比でやや低下(22.3%、前年同期比2.3pt減)した。加えて、2025年1月に新たに連結対象となったベトナムのTMC社に関連するのれんや設備費用も費用計上され、利益面では一部圧迫要因となったものの、全体としては国内外ともに堅調な成長を継続している。

2025年12月期の通期見通しとしては、売上高59,000百万円(前期比24.2%増)、営業利益4,720百万円(同31.9%増)を見込んでいる。高齢化進行や感染症対策需要の持続など、医療・介護業界を取り巻く環境が追い風となる一方で、施設の統廃合や人手不足といった構造的課題もあるなか、CSセットの新規導入および高利用率維持による拡販を軸とした事業拡大を計画している。加えて、2024年以降本格化した海外事業の伸長も大きく、ベトナムのTMC社との連結は25年第一四半期から開始となり、海外売上は前年比約9倍の2,400百万円規模を想定。国内外における利用者ニーズの的確な把握と、病院・施設・協力業者との三位一体の価値提供体制によって、収益性の高いストック型ビジネスモデルをさらに進化させる見通しである。

市場環境は、少子高齢化に伴う医療・介護需要の増加が長期的な追い風となっており、特に感染症対策の必要性や人手不足による業務負担軽減ニーズの高まりが、CSセットの導入を後押ししている。2021年の介護報酬改定では、感染症対策が運営基準に組み込まれ、これがセット導入の追い風となった。さらに、面会制限下での「手ぶらで面会」ニーズにも応える形で、施設側の導入が加速。地域別では、東北エリアや九州・北海道などの「白地」と呼ばれる未開拓地域での伸びが著しく、同社は営業リソースをこれらのエリアに重点的に配分している。

将来的な成長ドライバーとしては、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅など、新たな介護施設への展開が挙げられる。従来は病院向けに特化していたが、高齢者の生活に即した柔軟なサービスを提供できるCSセットは、こうした施設との親和性が高い。これを支えるのが、親会社エムスリーとの連携である。エムスリーは全国の医療機関に強固なネットワークを持ち、医師や病院経営層との接点を活かしたトップダウン型営業を可能にしており、導入スピードの加速に寄与している。また、共同による商品開発や、購買・物流面でのコスト削減効果も出始めており、差別化されたCSセットの実証トライアルも計画されている。こうしたシナジーは営業力や商品力の強化だけでなく、収益性向上にも直結し、今後の持続的成長に大きく貢献すると見られる。

株主還元については、2024年12月期の配当は13円(配当性向33.4%)で、2025年は15円(同29.4%相当)を予定しており、成長企業ながらも安定的な還元姿勢を堅持している点は評価できる。ROEは25.320.2%と非常に高水準であり、自己資本利益率の観点でも資本効率が高い経営がなされている。営業CFも潤沢であり、2024年度には過去最高の45億円を計上しており、将来的な配当引き上げや自社株買いといった還元余力にも注目が集まる。

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