BASEの鶴岡裕太氏(左)とタイミーの小川嶺氏(いずれも会社HPより)
日本の大富豪といえば、ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正氏(76)や、ソフトバンクグループの孫正義氏(67)の名前を思い浮かべる人が多いだろう。いずれも昭和、もしくは平成初期に頭角を現した起業家たちだ。
だが今、彼らとはまったく異なるタイプの「平成生まれ」の億万長者たちが次々と誕生している。国税庁による「高額納税者ランキング」、いわゆる「長者番付」の公表が廃止された現在、億万長者を知る新たな指標が保有する株式の時価総額だ。
事業の拡大に成功した起業家はIPO(新規株式公開)を目指すことが多いが、その舞台に「平成生まれ」の新世代が数多く登場し始めた。本誌・週刊ポストは企業価値検索サービス「Ullet(ユーレット)」協力のもと、上場企業の有価証券報告書から「平成生まれ」で保有株の時価総額が10億円以上の人物を抽出し、ランキングを作成した。
商売人家系で身につく経営の“肌感覚”
ランクインした若手起業家たちの傾向のひとつに、「商売人の家系」という特徴がある。ジャーナリストの大西康之氏は、保有時価総額69億円でランキング11位に入った、ネットショップ作成サービスを展開するBASEの創業者で代表取締役CEOの鶴岡裕太氏(35)をこう紹介する。
「鶴岡さんは、お母さんが洋品店を営んでいたそうです。“うちの母でも簡単にネット販売ができるようなサービスがあったら”という着想で、BASEを立ち上げたといいます。実際、Amazonや楽天などの大手ECモールは出店時に審査がありますが、BASEは誰でもすぐにショップを開設できる設計です。スモールビジネスを始めたい層に支持され、利用者は右肩上がりに増え続けています」
保有時価総額448億円でランキング2位に入ったタイミーの代表取締役・小川嶺氏(28)もまた、商売人の家系に育った人物だ。スキマ時間で働けるバイトマッチングアプリ「タイミー」を運営する小川氏は、曾祖父と祖父が乳業会社・小川乳業を経営していたという。
「親が商売をやっている家で育つと、経営センスが身につくんですよ。たとえば、サラリーマン家庭で育った人の場合、起業する際に銀行などから資金を借りるというのは怖いと思いがちですが、商売人の子供は親が金融機関から普通にお金を借り入れているのを知っているので、さほど抵抗がない」
大西氏は、今回のランキングに名を連ねた若手起業家の複数が、資金調達や経営判断を“肌感覚”で理解できる家庭環境にあったと分析している。