*13:28JST 信越ポリマー:過去最高業績更新へ、視界は良好
信越ポリマー<7970>は、塩化ビニル樹脂やシリコーンゴムの加工技術を核とする樹脂加工メーカーであり、1960年9月に信越化学工業株式会社の全額出資により設立された。その後、1983年12月に東京証券取引所市場第二部に上場、1985年9月には市場第一部に指定替えを行い、現在はプライム市場に上場している。
同社は「遵法に徹し、公正な企業活動を行い、技術と製品による価値を創造し、社会と産業の発展に貢献する」という企業理念のもと、持続可能な社会の実現を視野に入れた事業運営を行っている。企業行動規範としても、法令遵守や環境保全、地域社会との共生、人権尊重などを重視し、企業市民としての責任を明確にしている。
事業は電子デバイス事業、精密成形品事業、住環境・生活資材事業の三本柱から構成されており、それぞれ自動車や情報機器、半導体関連製品、OA機器部品、医療・理化学用途、包装資材、建設資材など多彩な分野に展開している。さらに、国内6拠点のほか、ヨーロッパ2拠点、北米1拠点、アジア12拠点を擁し、グローバルなネットワークを形成し、世界市場に展開している。なお、2025年4月1日には食品包装用フィルム事業を展開する完全子会社であったキッチニスタを吸収合併し、ラップフィルム事業を統合したことで組織効率と柔軟な対応力を強化した。
2025年3月期連結決算は、売上高110,582百万円(前期比5.9%増)、営業利益13,271百万円(同20.1%増)、経常利益13,218百万円(同14.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益9,430百万円(同8.7%増)となり、売上、利益ともに過去最高を更新した。主なセグメント別に見ると、電子デバイス事業では、自動車産業向けの需要低迷により車載入力デバイスが低調であったが、新製品である延焼防止クッションの出荷開始や液晶接続用コネクターの需要増により、一定程度を補った。結果として、売上高は24,848百万円(前期比2.6%減)、営業利益は1,190百万円(同42.6%減)となった。精密成形品事業は、半導体関連容器やプリンター用ローラ、AIサーバー向けキャリアテープ、メディカル用シリコーン製品などがいずれも堅調であった。売上高は56,024百万円(同17.7%増)、営業利益は10,244百万円(同42.1%増)と大幅な増収増益を記録した。住環境・生活資材事業では、外食向け小巻ラップは好調であったものの、機能性コンパウンドの在庫調整や塩ビ管事業の譲渡が響いた。さらに効率化を目的にキッチニスタの吸収合併を実施。売上高は22,080百万円(前期比8.7%減)、営業利益は1,363百万円(同0.8%減)であった。
財務面では、総資産152,988百万円、自己資本比率80.2%と高水準を維持し、財務の安定性は引き続き強固である。配当については、年間52円(中間25円、期末27円)とし、前期比6円の増配を実施。配当性向は44.4%に達し、株主還元への積極姿勢が継続された。
なお、2026年3月期の通期業績予想については、売上高113,500百万円(前期比2.6%増)、営業利益13,900百万円(同4.7%増)、経常利益14,000百万円(同5.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益9,500百万円(同0.7%増)としている。配当予想については、年間56円(中間28円、期末28円)とし、前期比4円の増配としており、配当性向は47.4%となる。同社では今期の為替レートを1ドル145円で想定しており、為替感応度は1円円安になると年間で90百万円の営業利益増とのことである。
同社は、2024年3月期より、2028年3月期を最終年度とする中期経営計画「Shin-Etsu Polymer Global & Growth 2027(SEP G&G 2027)」を策定している。本計画では、事業戦略と財務・非財務戦略を柱とし、サステナブルな成長を図ることを目指している。事業戦略の主要施策としては、従来からの強みである「基盤領域」の拡充と、今後成長が見込まれる「成長領域」に分けて具体的な注力領域を定めており、具体的かつ妥当性の高い施策が示されている。他方、財務戦略では、基盤領域に100億円、成長領域に410億円、さらに、戦略投資とM&Aに最大150億円投資する計画を立てている。事業戦略との整合性が取れているだけでなく、アップサイド機会への備えもなされている。非財務戦略では、環境負荷低減に向けた取り組み、人権デューデリジェンスの実施とCSR調達の推進など、サプライチェーン全体にサステナビリティ経営を実践する構えである。こうした取り組みにより、最終年度である2028年3月期には、売上高150,000百万円、経常利益20,000百万円、ROE10%強、配当性向最大50%という主要KPIを掲げている。なお、本中計の主要KPIには、将来的なM&Aの効果は織り込まず、オーガニック成長のみで達成する計画である。過去最高業績の更新に向け、視界は良好である。
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